2022年02月02日

「劇場版 DEEMO サクラノオト あなたの奏でた音が、今も響く」舞台あいさつ 人気アプリゲームのアニメ化「映像と音楽を楽しんで」

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 2月25日公開のアニメ映画「劇場版 DEEMO サクラノオト あなたの奏でた音が、今も響く」の完成披露試写会がこのほど東京都内で行われ、声を演じた竹達彩奈、丹生明里(日向坂46)、松下洸平らと藤咲淳一総監督、松下周平監督が舞台挨拶した。

 世界で2800万ダウンロードを超えた人気音楽アプリゲーム「DEEMO」の劇場アニメ化。ピアノを弾く謎の生き物「Deemo」が住む不思議な城に、記憶を失くした少女アリスが現れる。Deemoはピアノの音色で木を成長させ、アリスが元いた世界へ戻そうと試みる。脚本も手掛けた藤咲監督は「テーマは謎と音楽。アリスとDEEMOが何者かという謎を面白くするために音楽の力を借りた」と話した。

 ゲームシリーズからアリスの声を担当している竹達は「ゲームはアリスしか話さないので、独りぼっちの世界観が強かった。アニメでは新しいキャラクターに命が吹き込まれ、にぎやかになった。そのおかげでアリスが年相応のかわいい子供になり、新鮮な気持ちで演じられた」と語った。

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 また、今回が長編アニメーションの声優初挑戦となった丹生と松下。丹生は「ずっと憧れだったのでうれしかった。エンドロールで自分の名前が出た時はウルっとした。映画館の中から自分の声が聞こえると思ったら感極まった」。松下も「絵の中のハンスに合わせるには、ありのままの自分の声では物足りない。声を当てながら強弱や言い方を監督と相談して何パターンも取った。貴重な体験だった」と振り返った。

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 猫のぬいぐるみ・ミライ役に苦戦をしたという濱田岳。「ぬいぐるみにどんな感情や苦労があるのか。動きも表現するなら勝算があったかもしれない。声ひとつで表現する声優の仕事は本当に奥が深い」としみじみ。イッセー尾形は「声優はどんなに動いても見てもらえない。一人ブースの中でやみくもに動きながら録音した。こんなに感情移入したことはない。24時間、くるみ割り人形と向き合った」と話した。

 音楽について竹達は「木が成長する段階で素敵な映像と音楽が流れるので、ぜひチェックして」とアピール。自身も音楽活動をしている松下は「ピアノの音色から思い出される景色や人が大事。僕自身も懐かしい出来事を思い出しながら、その頃弾いていた曲を弾くと一瞬でタイムスリップできる、音楽ってそういう存在。この作品も音楽と記憶が絶妙にリンクしている」と語った。

 アニメーションを担当した松下監督は「音楽が素敵なのでライブを見る気分で観てもらえたら」。最後に竹達が「劇場版になるなんて夢みたい。愛がぎゅっと詰まった作品なので、優しさに包まれて素敵な時間を過ごして」と締めくくった。

(文・写真 岩渕弘美)

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「劇場版 DEEMO サクラノオト あなたの奏でた音が、今も響く」(2022年、日本)

総監督:藤咲淳一
監督:松下周平
声の出演:竹達彩奈、丹生明里、鬼頭明里、佐倉綾音、濱田岳、渡辺直美、イッセー尾形、松下洸平、山寺宏一

2022年2月25日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://deemomovie.jp/

作品写真:(C)2021 Rayark Inc. /DEEMO THE MOVIE Production Committee
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2022年01月22日

「さがす」父の失踪と三つの視点 巧みな脚本で観客を翻弄

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  大阪の下町で平穏に暮らす原田智(佐藤二朗)と中学生の娘・楓(伊藤蒼)。「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万円もらえるで」。父のいつもの冗談だと思い、相手にしない楓。しかし翌朝、智は煙のように姿を消した──。

 「岬の兄妹」(18)で監督デビューした片山慎三監督の長編2作目。個性派俳優の佐藤二朗、「湯を沸かすほどの熱い愛」(16)の伊藤蒼、「東京リベンジャーズ」(21)の清水尋也、Netflixドラマ「全裸監督」(19)の森田望智らが出演している。

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 大阪の父娘と連続殺人が絡み合い、3つの視点で物語が展開する。第一の視点は楓。母を亡くした楓は、万引きで捕まった父を迎えに店に走る。だらしないが憎めない父は「連続殺人犯を見た」と言い残して失踪する。楓は警察に相手にされず、中学の担任と街頭でチラシを配っていたところ、日雇い工事現場に父の名があると知る。

 第二は連続殺人犯・名無しの視点だ。SNSで自殺者を募り、連絡してきた人から金を取って殺す冷酷な男。第三の視点が失踪した智だ。監督の実父が過去に「電車の中で逃げる指名手配犯を見た」エピソードが物語の骨格になっているという。フィクションに真実を紛れ込ませ、物語をいつの間にか真実のように錯覚させる。犯人の設定に実際のいくつかの事件の犯人像を投影させ、観客を混乱させながら最終地点へ向かう。

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 着眼点の面白さと練りに練った脚本のうまさ。情報を小出しにしながら観客を迷わせ、予想外の場所へ着地させた演出にうなった。俳優たちの好演も光る。くせのある個性派・佐藤のシリアスな役者ぶり、難しい役を堂々と演じ切った伊藤蒼。連続殺人犯を演じた清水の冷酷なたたずまいが際立った。失踪者、自殺ほう助、SNS、指名手配犯、連続殺人など、現代社会の闇を盛り込んだ作品だ。

(文・藤枝正稔)

「さがす」(2022年、日本)

監督:片山慎三
出演:佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也、森田望智、石井正太朗、松岡依都美、成嶋瞳子、品川徹

2022年1月21日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://sagasu-movie.asmik-ace.co.jp/

作品写真:(C)2022「さがす」製作委員会

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2022年01月16日

「なん・なんだ」団塊男の残された時間 妻の「別の顔」を探す旅

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 結婚して40年になる三郎(下元史朗)と美智子(烏丸せつこ)。ある日、美智子が「文学講座に行く」と出かけて交通事故にあい、昏睡状態になる。三郎は途方に暮れる中、美智子の趣味だったカメラのフィルムを現像すると、見知らぬ男が写っていた。浮気相手の存在に困惑しつつ、三郎は娘の知美(和田光沙)と男探しの旅を始める──。

 高橋伴明監督の「襲われた女」(81)などピンク映画300本以上、劇場映画やVシネマにも約300本出演してきた名脇役・下元。「四季・奈津子」(80)、「駅 STATION」(81)などの烏丸。監督は2019年の第32回東京国際映画祭「東京スプラッシュ部門」で「テイクオーバーゾーン」(19)が上映された山嵜晋平だ。

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 三郎と美智子は団地住まい。シルバー世代夫婦のなにげない日常で幕を開ける。しかし、妻が外出後、警察から「ひき逃げで意識不明」と連絡が入り、物語は急に動き出す。病室で眠る美智子が残したフィルムには、知らない男がいた。妻への怒りと疑念が三郎を突き動かす。妻が疎遠にしていた実家に向かい、義姉・絹代(三島ゆり子)から男の手掛かりを聞き出そうとする。40年連れ添った妻の別の顔を探る旅が始まった。

 監督は10年ほど前、高齢男性の自殺を止めた経験から、「老いた人間の残された時間の生き方を描きたい」と考えるようになったという。昔気質の元大工・三郎は、気が短く、カッとなるとすぐ手が出る。妻の昔の交際相手の存在が気に入らず、老人同士の取っ組み合いを繰り広げる始末だ。自分の不甲斐なさを他人に向けて発散しているようにも見える。

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 タイトルの「なん・なんだ」は、三郎ら団塊世代の男たちの言葉だろう。人生の終わりが見えてくる中、予想外の事実、理不尽な世の中への率直な感情表現かもしれない。無骨な職人を演じた下元、夫と愛人の前で別の顔を見せる烏丸の色気。愛人を演じた佐野和弘は、咽頭がんで声帯を失っており、本人同様に声を失った医師を好演する。

 山嵜監督の演出はどこか無骨で、まるで三郎の性格のようだ。昨今のスマートなメジャー作品と一線を画し、観客の心に訴えかけてくる。シルバー世代に入ったベテラン俳優たちが、いぶし銀の力強い演技を見せる。老い、夫婦、家族について改めて考えさせられる作品だ。
 
(文・藤枝正稔)

「なん・なんだ」(2021年、日本)

監督:山嵜晋平
出演:下元史朗、烏丸せつこ、佐野和宏、和田光沙、吉岡睦雄、外波山文明、三島ゆり子

2022年1月15日(土)、新宿K's cinemaほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://nan-nanda.jp/

作品写真:(C)なん・なんだ製作運動体

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2022年01月15日

「明け方の若者たち」舞台あいさつ 北村匠海・黒島結菜・井上祐貴「場所、音楽、駆け抜け方──青春だった」

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 映画「明け方の若者たち」の公開記念舞台あいさつがこのほど 東京・六本木で行われ、主演の北村匠海、黒島結菜らが作品への思いを語った。

 人気ライター・カツセマサヒコの小説家デビュー作を映画化。主人公の「僕」を北村匠海、「彼女」をNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」のヒロイン・黒島結菜、「僕」の友人を井上祐貴が演じた。23歳の新鋭、松本花奈監督の元に同世代の若者が集結。リアルな若者をスクリーンに映し出した。

 北村は「この作品はもう僕らの手を離れてしまったと寂しさを実感している。同世代の若者で作れた思いが強く、大学サークルの自主映画を作っている感覚だった。みんなで何度も明け方(の空)を見ながら、明日も会えると思っているうちに終わってしまった。場所、音楽、撮影期間、駆け抜け方も青春に近いものがあった」と振り返った。

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 正月休みに映画アプリで作品名を確認した黒島は「すごくうれしかった。皆さんの感想を読んで、映画が届いていると感じた」と話した。原作者のカツセも「インスタグラムでタグ付された感想は賛否あった。いろいろなとらえ方ができることが大切だ、と思っていたので、実際に形になっていてうれしかった」と語った。

 この日が2022年最初の舞台あいさつで、それぞれに今年の抱負を披露。松本監督は「免許を取って、大学を卒業したい」。カツセは「次の作品、その次の作品と認めてもらえるように頑張っていきたい」と意欲を述べた。井上は「去年の自分を越え、新しい挑戦をしたい。自分を信じて突き進みたい」と話した。


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 21年は俳優、バンドメンバーとして活動した北村は「いっぱい失敗したい。一度立ち止まって、学び直す年にしたい。抱負は『地味に生きる』。このままだと10年後、20年後に中身のない人間になりそうなので、いろいろ学んで、2022年は身のぎっしり詰まったカニ味噌みたいにする」と話した。黒島は「ハッピーに楽しく1年過ごしたい」とにっこり。カツセが「主人公が『地味に』、ヒロインが『ハッピーに』と言っているところがこの作品っぽい」と笑い、終始和やかムードの舞台あいさつとなった。

(文・写真 岩渕弘美)

「明け方の若者たち」(2021年、日本)

監督:松本花奈
出演:北村匠海、黒島結菜、井上祐貴、山中崇、楽駆、菅原健、高橋ひとみ、濱田マリ

2021年12月31日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://akegata-movie.com/

作品写真:(C)カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会

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2022年01月04日

「明け方の若者たち」明大前で出会った二人 ほろ苦くひねりの効いた恋愛映画

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東京・明大前で開かれた大学生活最後の飲み会。そこで出会った彼女(黒島結菜)に僕(北村匠海)は一目で恋をした。下北沢のスズナリで観た舞台、高円寺で一人暮らしを始めた日、フジロックに対抗するために旅した夏。しかし、社会人になった後、「こんなはずじゃなかった人生」に打ちのめされる──。

 人気ライター、カツセマサヒコの同名小説デビュー作を映画化。出演は「東京リベンジャーズ」(21)の北村、今年のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」のヒロインに抜擢された黒島。監督は新進監督15人によるオムニバス映画「21世紀の女の子」(19)の松本花奈。

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 内定を勝ち取った学生たちの飲み会。にぎわいの中で疎外感を抱く僕に、スマホをなくした彼女が「私の番号に電話をかけて」と頼んできた。言われるままにかけると、その場でスマホは見つかった。その後、先に出て行った彼女から僕のスマホにメッセージが入る。「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」。僕は飲み会を中座し、彼女が待つ公園に向かった。落ち合った二人は、ハイボール缶を片手に趣味や好きな音楽を語り合い、意気投合する。

 若い男女の恋愛ドラマは、去年公開された「花束みたいな恋をした」(21)を思い出させる。2作品とも起点は明大前。固有名詞を挙げて語られる音楽やサブカルチャーが二人をつなぐ。就職した僕のリアルな社会人生活。時間とともに変化していく恋。2作品には共通点が多い。しかし、「明け方の若者たち」は中盤以降、あっと驚く仕掛けにより、予想外の方向に動き出す。ちょっとしたミステリー作品をしのぐ巧みな構成だ。

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 恋の高揚感、就職の理想と現実。思い悩む一方で、働くことで広がる交友関係や同期社員との友情。しかし、彼女の真実が明かされたことで、僕の人生が重くなっていく後半がポイントだ。

 どこかつかみどころのない僕役の北村は、今時の若者を等身大で好演。黒島のクールでミステリアスな彼女も適役。松本監督は若干23歳。今後の活躍も楽しみな、ほろ苦くひねりの効いた恋愛映画だ。

(文・藤枝正稔)

「明け方の若者たち」(2021年、日本)

監督:松本花奈
出演:北村匠海、黒島結菜、井上祐貴、山中崇、楽駆、菅原健、高橋ひとみ、濱田マリ

2021年12月31日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://akegata-movie.com/

作品写真:(C)カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会

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