
アニメ大好き、BL(ボーイズ・ラブ)大好き、妄想大好き。ヲタク道まっしぐらな花依(富田望生)は、大好きなアニメキャラが死んだショックで1週間も寝込み、目が覚めたら激ヤセして超絶美人(山口乃々華)になっていた。そんな花依を同じ学校のイケメンたちが好きになる──。
第40回講談社漫画賞・少女部門を受賞作の「私がモテてどうすんだ」を映画化した作品。監督、脚本は「HiGH&LOW」シリーズの脚本を担当し、「DTC-湯けむり純情篇-from HiGH&LOW」(18)で監督デビューした平沼紀久。

高校を舞台に少女1人と男子4人が織りなす恋愛コメディー。学園恋愛漫画「花より男子」を思わせる設定だ。主人公・花依のキャラ設定がすごい。恋愛経験なしでアニメとBLが大好きな太った妄想少女。クラスに1人はいて、男子が気にもとめない存在だが、激ヤセして美人に変身したことで状況が一変する。
ぶっ飛んだ設定を漫画なら簡単に表現できるが、実写では難しい。ハリウッド映画「ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合」(96)では、痩せたエディ・マーフィーが特殊メイクで巨漢を演じた。「私がモテてどうすんだ」は富田と山口が二人一役。割り切ったキャスティングだ。

富田のコメディエンヌぶりに対して、美少女変身後の山口は演技と歌とダンスで魅了する。変身した花依に一目ぼれしてしまうイケメンも個性派がそろった。サブカル系の吉野北人、スポーツ系の神尾楓珠、チャラい系の伊藤あさひ、ツンデレ系の奥野壮。
ポイントは花依の外見と内面のギャップだ。痩せてかわいくなったものの、中身はバリバリのヲタク少女。イケメンがイチャイチャするのを見て妄想を膨らませ、デートはアニメスポット巡り。油断するとまたすぐ太ってしまうが、イケメン4人は突き放すことなく、ごほうびをちらつかせ、美少女に戻そうと努力する。力を合わせる姿がほほえましい。美少女となった花依を舞台劇のヒロインにスカウトする演劇部員も加わり、花依のハート射止めるためしのぎを削る4人。恋愛ゲームに火花が散る。
少女漫画が原作ならではのテンポよいドラマに笑いをちりばめ、バランスの良い演出でグイグイと観客の心をつかむ。歌とダンスも挿入されて気分も盛り上がる。新型コロナウイルスの感染拡大で、暗くなりがちな世相だが、そんな気分を忘れさせてくれる楽しい恋愛コメディーだ。
(文・藤枝正稔)
「私がモテてどうすんだ」(2020年、日本)
監督:平沼紀久
出演:吉野北人、神尾楓珠、山口乃々華、富田望生、伊藤あさひ、奥野壮
2020年7月10日(金)から公開中。作品の詳細は公式サイトまで。
https://movies.shochiku.co.jp/eiga-watamote/
作品写真:(C)2020「私がモテてどうすんだ」製作委員会 (C)ぢゅん子/講談