10月9日公開のサスペンス映画「望み」の公開を前に、東京都内でこのほど完成披露試写会が行われ、主演の堤真一、石田ゆり子、堤幸彦監督が舞台挨拶した。雫井脩介の同名ベストセラー小説が原作。消えた息子をめぐって家族の思いが交錯する作品だ。息子・規士役を岡田健史、妹・雅役を清原果耶、父・一登役に堤、母・貴代美役を石田が演じる。堤は「難しいというか、発している言葉と体にずれを感じて、本当につらかった」と語った。
幅広いジャンルの作品を手がけてきた堤監督は「キャストやスタッフに助けられ、体験したことのない、演劇を作っているような緊張感ある撮影ができた」と振り返った。父親役の堤については「ひとことひとこと、ものすごい熱量をかけて、考え抜く演技をしてもらった」と絶賛。石田には「前回の『悼む人』(15)でかなりきついことを要求したが、それに勝るとも劣らないつらさを強いてしまった。強い母の愛を体現してもらい感謝している」と話した。息子役の岡田については「若い俳優の中でも誰にも代えられない存在感を持っている。残り香というか、振り向いて目線の先に何かを残していく演技に注目してほしい」と語った。
父・一登を演じた堤は「台本を読んだ時、良い話とは思ったが難しいので断ろうと思った。現場に入ってからも難しいというか、発している言葉と体にずれを感じて、肉体と気持ちが解離していくような感覚で本当につらかった。撮影以外の時は、楽しく過ごそうとベラベラしゃべっていた」と撮影を振り返った。
これに対し、石田も「撮影以外の堤さんは薪ストーブがどんなに素晴らしいか、薪ストーブの話ばかりしていて、私も欲しくなりました」と話して笑いを誘った。母・貴代美役ついては「想像を絶する役だったので、話しを全て理解したうえで飛び込むしかない。ある瞬間から全てのシーン泣かなければならなくて、つらかった」と苦労を口にした。
息子を演じた岡田は「僕の演じる規士が加害者なのか被害者なのかが肝になる作品。どちらにもとれるよう、社会性をなくすことを突き通した。今までの作品とは違うアプローチだったので、衣装合わせの時に監督から『反抗期(の空気)を出して』と言われた。準備したことは間違っていなかった。監督が肯定してくれたから、のびのびと規士を生きることができた」と話した。
最後に堤が「色々な視点で観ることができる映画。それぞれの視点で観てもらえれば」、石田は「時間がとても濃い。1秒にものすごく凝縮された気持ちが詰まっていて、あっという間に観終ってしまうと思う。集中して見て下さい」、岡田は「映画を観て、両親や、子どもや家族を思い出して、家に帰ったら家族を愛でる時間を設けて下さい」と語った。
堤監督は「映画のどこかに皆さんが所属していると思います。それくらい皆さんの心に刺さる、刺さりたいという気持ちで作ってきたので、最後まで見て下さい」と呼びかけて締めくくった。
(文・写真 岩渕弘美)
「望み」(2020年、日本)
監督:堤幸彦
出演:堤真一、石田ゆり子、岡田健史、清原果耶
2020年10月9日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
https://nozomi-movie.jp/
作品写真:(C)2020「望み」製作委員会