2020年11月21日

第33回東京国際映画祭を振り返って 大九明子監督「私をくいとめて」に観客賞

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 今年は新型コロナ肺炎拡大の中での開催となった「第33回東京国際映画祭」。TOHOシネマズ六本木ヒルズをメーン会場に、2020年10月31日から11月09日まで開催された。昨年の上映本数183本に比べ、今年は138本と約25%減った。印象に残った作品を紹介したい。

 海外の審査員やスタッフ、キャストの来日が難しいため、「コンペティション」3部門が中止。代わりに「TOKYOプレミア2020」として、アジアを中心としたワールド・プレミア作品から観客が投票で選ぶ「観客賞」が設けられ、大九明子監督「私をくいとめて」(20)が選ばれた。大久監督は2017年に同映画祭で上映された「勝手にふるえてろ」(17)続き、2度目目の観客賞獲得となった。 写真:(c)2020「私をくいとめて」製作委員会

<TOKYOプレミア2020>

「アフター・ラヴ」(英)
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 夫の急死を悲しんでいた未亡人のメアリーは、知られざる夫の一面を発見し、真相を探るべく英から仏に渡る──。夫と別の女性の二重生活を知ったメアリーだが、乗り込んだ浮気相手の女性に家政婦と間違えられる。引っ越し準備中の浮気相手の家でメアリーは家政婦になりきり、夫のもう一つの顔を知ると同時に、夫が遺した息子と出会う。やや強引なプロットだが、浮気相手への憎しみが、やがて氷山が崩れ落ちるように、同じ男を愛した同士の理解と共鳴に変わる瞬間を明確に描いた作品だ。写真:(c)British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, After Love Production 2020 (c)RÅN studio

「マリアの旅」(スペイン)
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 安定した老後を迎えていたマリア。入院先で相部屋となった若いヴェロニカの様態が急変する。無縁仏となった身寄りのないヴェロニカの位牌を、マリアは故郷へ返すべく旅に出て、さまざまな人と出会い、数々の経験を積む。静かだったマリアの人生が輝きを取り戻すロードムービーだ。写真:(c)Lolita Films, Mediaevs, Magnetica Cine, Smiz & Pixel, La Vida Era Eso AIE

<ワールド・フォーカス 台湾電影ルネッサンス2020>

「悪の絵」(台湾)
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 服役中の殺人犯の絵に魅了された画家が、その絵を世に出そうと奔走する。「殺人犯が描いた絵に罪はあるか」。被害者と加害者と家族、絵に魅了された高名な画家の苦悩と葛藤。重いテーマに真正面から切り込んだ新人監督チェン・ヨンチーの意欲作。写真:(c)Positivity Films Ltd. & Outland Film Production

「足を探して」(台湾)
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 敗血症の夫は足を切断するも、還らぬ人になった。妻は行方不明となった夫の足を病院で探す。執念深い妻を描いた現在と、夫婦の出会いから夫が亡くなるまで過去が交差しながら展開。ブラックでシニカルなドラマで、今年の「台湾金馬映画祭」オープニング作品。写真:(c)Creamfilm Production

 東京国際映画祭は、世界の珍しい作品が一堂に会する映画ファンにとって年1度の祭である。各国の文化や風習を理解していないと楽しめない作品もあるが、知らない世界の作品と出合えるまたとないチャンスだ。

 新型コロナウイルスという見えない脅威の中で、安全な形で映画祭を開催した運営スタッフと学生ボランティアに感謝したい。映画祭で上映された作品が1本でも多く日本で劇場公開されることを願う。

(文・藤枝正稔)

posted by 映画の森 at 13:18 | Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする