2020年12月24日

「新感染半島 ファイナル・ステージ」大ヒットゾンビ映画続編 舞台は列車から半島全体へ 迫力のカーアクション

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 謎のウイルス感染が半島を襲って4年。家族を守れなかった元軍人のジョンソク(カン・ドンウォン)は、亡命先の香港で廃人同様に暮らしていた。そこへ大金稼ぎの仕事が舞い込む。封鎖された半島に戻り、大金を積んだトラックを3日以内に回収する任務だ。半島への潜入に成功したジョンソクらを待っていたのは、増加した感染者と、この世の地獄を楽しむ狂気の民兵集団631部隊。両者に追い詰められたジョンソクを助けたのは、ミンジョン(イ・ジョンヒョン)と2人の娘だった──。

 大ヒットした韓国ホラー映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」の4年後を描いた続編「新感染半島 ファイナル・ステージ」。監督は前作に続いてヨン・サンホ。前作では人間が狂暴化する謎のウイルスが発生し、高速列車に感染者が紛れ込み、車内での生死をかけたサバイバルが描かれた。ドラマの根底には残酷なゾンビ映画と対照的な親子愛、自己犠牲が置かれ、世界の観客の心をつかんだ。

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 続編の「新感染半島 ファイナル・ステージ」は、前作の世界観を継承しつつ、新たな手法で勝負に出た。前作が高速列車内の密室劇にだったのに対し、今回は感染者のるつぼと化した半島すべてが舞台となる。極悪囚人の監獄島となった米ニューヨークに飛行機が墜落し、緊急脱出した大統領を救う近未来SF映画「ニューヨーク1997」(81)と似た設定だ。

 ジョンソクらが戻った半島では、民兵たちが街を牛耳っていた。光と音に反応する感染者たちを横目に、法も秩序のない半島で自堕落な生活を謳歌している。そんな民兵たちの楽しみは生存者の男たちをつかまえ、コロシアム風の場所に放ち、感染者との生き残りゲームを強制することだった。

 前作で描かれた親子愛の流れをくむのがミンジョン母子の物語だ。実は4年前、ジョンソクは助けを求めてきたミンジョンたち見捨てていた。その罪滅ぼしするように、ジョンソクは母子を助けようと奮闘する。

ジョンソクたちVS民兵631部隊VS感染者の構図で物語は展開するが、後半はジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」(78)と同じく人間VS人間の構図に変わる。半島から脱出を試みるジョンソクらは、大金を積んだトラックを狙う631部隊と激しいカーアクションを展開。身体能力が異常に高い感染者たちを巻き込んだすさまじいアクションは必見だ。

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 ミンジョンの若い長女ジュニが軽快なドリフト走行を見せ、迫りくる無数のゾンビ化した感染者たちを跳ね飛ばす。痛快なカーアクションはほぼCGだが、実写とCGゾンビとの融合スタイル。現在の韓国映画の柔軟な発想によるものだ。

 密室から解放空間へ進化し、現在の韓国エンターテインメント映画の熱量がそのまま反映されている。前作が正統なゾンビ映画とすると、続編はアクティブなゾンビ・アクション。人間の欲やエゴ、醜い争いを主軸に、舞台が解放されたことで、激しいアクションを多用した作品となった。

(文・藤枝正稔)

「新感染半島 ファイナル・ステージ」(2020年、韓国)

監督:ヨン・サンホ
出演:カン・ドンウォン、イ・ジョンヒョン、クォン・ヘヒョ、キム・ミンジェ、ク・ギョファン、キム・ドゥユン、イ・レ

2020年12月25日(金)、緊急先行公開。2021年1月1日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://gaga.ne.jp/shin-kansen-hantou/

作品写真:(C)2020 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILMS.All Rights Reserved.
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2020年12月08日

「ニューヨーク 親切なロシア料理店」出会いつながり助け合い 一歩ずつ前へ進む人たち

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 米ニューヨーク・マンハッタンで、創業100年を超える老舗ロシア料理店「ウィンター・パレス」。かつて栄華を極めた店も、今は古びて料理もひどいありさまだ。経営を立て直すため雇われたマネージャーのマーク(タハール・ラキム)は、刑務所を出たばかりで謎だらけの人物。常連の看護師アリス(アンドレア・ライズボロー)は、仕事中毒で他人のために生きる変わり者。そんな店に子供2人を連れ、夫から逃げてきたクララ(ゾーイ・カザン)が飛び込んでくる──。

 「幸せになるためのイタリア語講座」(00)、「17歳の肖像」(09)、「ワン・デイ 23年のラブストーリー」(11)などで知られるデンマーク出身の女性監督ロネ・シェルフィグによる群像劇。出演は「ルビー・スパークス」(12)のゾーイ・カザンら。

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 邦題はやさしげな「ニューヨーク 親切なロシア料理店」だが、原題「The Kindness of Strangers」の直訳は「見知らぬ人のやさしさ」。さまざまな問題を抱えた人々が織りなす、シリアスな群像劇だ。

 子どもたちを連れ、夫から車で逃れてきたクララ。看護師の激務をこなしながら、教会で悩みを抱えた人たちにセラピーを行い、貧しい人々に食事を無料で配るアリス。一方、出所したてのマークは友人の弁護士ジョン(ジェイ・バルチェル)に紹介され、店を立て直すことに。さらに、手先も人付き合いも破滅的に不器用な無職のジェフ(ケレイブ・ランドリー・ジョーンズ)は、腹をすかせて無料の食事配布所にたどり着く。

 真冬のニューヨーク。人生どん底の人たちが、ひょんなことで出会い、つながり、助けられながら一歩ずつ前進する。監督は客観的に問題を拾い上げ、キャラクターを街に放ち、さまざまな状況で出会わせる。互いの優しさに触れ、影響を与え合いながら、それぞれが抱えている問題を解決しようと努力する。

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 ポイントは人をつなげる舞台となるロシア料理店だ。多民族社会マ米国を象徴する場所で、一歩店に入ると異国情緒あふれるロシアの雰囲気が漂う。登場人物は引き寄せられるように店に集まり、つながっていく。ロシア語なまりの怪しげな店のオーナー役は、英国出身の名優ビル・ナイ。力を抜いたチャーミングな老紳士を好演し、シリアスになりがちな物語に癒しを与えている。

 混沌としたニューヨーク。人と人のつながりの大切さ、優しさに気づかされる。

(文・藤枝正稔)

「ニューヨーク 親切なロシア料理店」(2019年、デンマーク・カナダ・スウェーデン・ドイツ・フランス)

監督:ロネ・シェルフィグ
出演:ゾーイ・カザン、アンドレア・ライズボロー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、タハール・ラヒム

2020年12月11日(金)、シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.cetera.co.jp/NY/

作品写真:(C)2019 CREATIVE ALLIANCE LIVS/RTR 2016 ONTARIO INC. All rights reserved
posted by 映画の森 at 12:36 | Comment(0) | デンマーク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする