ゲーム会社のプログラマー、マイルズ(ダニエル・ラドクリフ)は、ネットへの過激な書き込みで日々の鬱憤(うっぷん)を晴らしていた。しかしある日、殺し合いを生配信する闇サイト「スキズム」で闇組織に襲撃され、目を覚ますと両手に拳銃が固定されていた。さらに「スキズム」に参加し、24時間以内に「最強の殺し屋・ニック(サマラ・ウィーヴィング)」に勝てと命令される──。
「華麗なるギャツビー」(13)、「ウルヴァリン:SAMURAI」(13)のVFX担当として活動後、「デビルズ・メタル」(15)で長編監督デビューしたジェイソン・レイ・ハウデンが、監督と脚本を手掛けたガンアクション映画だ。
主演のラドクリフは「ハリー・ポッター」シリーズで人気を博したが、その後は優等生ハリーのイメージがついて役に恵まれなかった。「スイス・アーミー・マン」(16)では便利機能が付いた死体と自虐的な役も。今回の「ガンズ・アキンボ」は、手に拳銃をボルトで固定された情けない役。本人も優等生キャラを壊すかのごとく、楽しんで演じているようだ。
闇サイト「スキズム」は、カメラを搭載した小型ドローンでプレーヤーを追いかける。ドローンが飛べない場所は、街中の防犯カメラを乗っ取り、殺人ゲームを生配信。ゲームに強制参加させられたマイルズは、ニック殺しのミッションを命じられる。
両手がふさがり、スマホも使えず、用もまともに足せない。不自由な状態にうろたえるマイルズは、自宅まで容赦なく襲ってくるニックから逃げるしかない。恋人ノヴァに助けを求めたものの、手に固定された拳銃を見た彼女はパニック状態になり、警察に駆け込んでしまう。マイルズはニックに加えて警察にまで追われ、そのうえノヴァがスキズムに拉致される。
過激なSNSや暴力ゲームに浸かったネット世代を意識し、彼らを揶揄したようにも見える作品。殺人ゲームを実写したようでもあり、刺激的な映像にアドレナリンが吹き出る。物語はシンプルで、子ども時代のトラウマを抱えるニックが殺人兵器に変貌するサイドストリーもうまい。
最初は負けっぱなしだったマイルズが、殺人ゲームを通して成長していく姿も痛快で、ラドクリフ久々の当たり役といえる。ニックを演じたウィーヴィングの憎らしいヒールっぷりもよく、切れ味抜群の痛快アクション映画に仕上がった。
(文・藤枝正稔)
「ガンズ・アキンボ」(2019年、英・独・ニュージーランド)
監督:ジェイソン・レイ・ハウデン
出演:ダニエル・ラドクリフ、サマラ・ウィービング、ナターシャ・リュー・ボルディッゾ、ネッド・デネヒー
2021年2月26日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
https://guns-akimbo.jp/theater.html
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