2021年10月10日

「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」ニコラス・ケイジ×園子温監督 奇想天外の無国籍アクション

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 米俳優ニコラス・ケイジを主演に迎え、園子温監督がハリウッド・デビューを果たした「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」。西部劇と時代劇を合わせたような痛快エンターテインメント・アクションだ。「悪魔のいけにえ2」(86)のビル・モーズリー、「キングスマン」(14)のソフィア・ブテラらが出演している。

 悪名高き銀行強盗ヒーロー(ニコラス・ケイジ)は、相棒のサイコ(ニック・カサベテス)と「サムライタウン」の銀行を襲撃する。しかしあえなく捕まってしまい、フンドシ一丁で手錠をかけられるはめになる。

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 投獄されたヒーローは、街を牛耳るガバナー(ビル・モーズリー)の孫娘バーニス(ソフィア・プテラ)を連れ戻す約束で釈放される。しかし、ヒーローが着せられた特殊なボディスーツには、「5日以内に娘を連れ戻さないと爆発する」爆弾がしかけられていた。

 「ルールを守らないと装着物で爆死」する設定は、「ニューヨーク1997」(81)で始まったアクション映画の定番だ。荒廃した近未来で主人公が救世主に祭り上げられるのは、「マッドマックス サンダーストーム」(85)を思い出させる。往年のB級アクションの定番ネタが随所に盛り込まれている。

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 しかし、期待のケイジは全体に体が重く、精悍さに欠ける。園監督もハリウッドの枠にとらわれたか、切れのよさが感じられない。そんな中、園監督作品でアクションを担当するTAK∴(坂口拓)が目を引く。ガバナーの用心棒・ヤスジロウ(小津安二郎監督へのオマージュか)として登場。監督とともにデビューしたハリウッドで、ケイジを相手に殺陣まで披露する。

 ケイジと園監督が組んだことで、期待値が高くなりがちだ。西部劇スタイルの俳優、派手な着物の女達、鎧かぶとの侍まで入り乱れ、まるでテーマパークを見るよう。日本人なら首をかしげる描写もあるが、監督は妄想のような世界を確信的に描いたのかもしれない。日米の才能が融合した奇想天外なアクション映画だ。

(文・藤枝正稔)

「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」(2021年、米)

監督:園子温
出演:ニコラス・ケイジ、ソフィア・ブテラ、ビル・モーズリー、ニック・カサベテス、TAK∴(坂口拓)、中屋柚香

2021年10月8日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

https://bitters.co.jp/POTG/

作品写真:(C)2021 POGL SALES AND COLLECTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
posted by 映画の森 at 10:15 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする