2009年10月26日

どん欲に新たなチャレンジを 女優ムン・ソリに聞く

札幌国際短編映画祭審査員で来日 「短編映画は私の恩師」

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 第4回札幌国際短編映画祭(10月13〜18日)の審査員として、夫で韓国映画監督のチャン・ジュナン氏とともに来日した女優のムン・ソリ。「ペパーミント・キャンディー」でデビューを飾り「オアシス」で脚光を浴びて以来、数多くの映画に出演している、韓国を代表する演技派女優だ。近年はテレビドラマにも“進出”し幅広い演技でファンを楽しませている彼女に、審査を終えた感想と今後の活動への思いを聞いた。

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 映画祭の審査員は何度か経験しているが、103本ものコンペ作品を審査するのは初めて。短編とはいえ密度の濃い作品がそろうだけに、審査会では深夜まで熱い議論が続いた。

 「確かに大変でしたけれど、それだけにやりがいがありました。これまで経験した映画祭の審査の中には、議論をせずに審査員の投票で決めるだけのものもあり、『自分は何をしにここへ来たのだろう』と思ったりもしました。でも今回の審査員たちは皆、討論する態度で臨んでいました。議論の末に自分の考えが変わったり、映画祭そのものの意義を徹底的に話し合ったりと、とても勉強になりました。無名の俳優たちの演技に衝撃を受けることもたびたびでした」

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 札幌国際短編映画祭は、今年4回目の新しい映画祭だ。まだ試行錯誤の段階である。だが、こういう小さな映画祭のほうが、マーケット重視の巨大映画祭よりも面白いという。

 自身は短編映画に10本近く出演している。多くは若手や知人の製作者が手がけるものだ。デビュー作「ペパーミント・キャンディー」(99)は、彼女がオーディションを受けて初めて出演した映画。大学の演劇サークルから映画の世界に飛び込んだ彼女が「オアシス」(02)にキャスティングされるまでの間、格好の勉強の場になったのが短編映画だった。その後も若手製作者を応援したい思いから、若手の作品には声がかかればできるだけ出演した。

 「短編映画は、長編ではできないチャレンジが可能です。宇宙人など奇想天外な役に挑戦したこともありました。韓国ではほとんどの監督や俳優は大学で映画を専攻しますが、教育学部で教師を目指していた私は映画を専門的に学んでいません。私に“映画とは何か”を教えてくれたのは短編映画であり、短編を作っていた製作者たちです。だからこそ短編映画は私の恩師であり、旧友であるといえます」

 「オアシス」では脳性まひの女性、「大統領の理髪師」(04)や「愛してる、マルスンさん」(05)では庶民的な韓国のお母さん、「私たちの生涯最高の瞬間」(07)ではハンドボールの五輪代表選手。実に多種多様な役柄を、文字通り体を張ってこなしてきたのは、固定したイメージを作りたくなかったからだという。これまでに演じたキャラクターで最も印象的だったものを尋ねると、こんな返事が返ってきた。

 「その時その時で、演じているキャラクターが大切です。周囲の人がみな、それぞれ大切なのと同じように」

 日本では、ペ・ヨンジュン主演という話題が先行したドラマ「太王四神記」。この作品を、すでに映画女優としての地位を確立している彼女が選択したのは意外だった。だが本人にとっては、新たなチャレンジの一つだった。 

 「映画でもテレビドラマでも関係なく、出演するかどうかは作品によって選びます。ただドラマは、映画とは違った意味で大変でした。スケジュールはきついし、シナリオもしょっちゅう変わりますし……。『太王四神記』で演じたキャラクターは、消化するのに少し時間がかかりました」

 「私たちの生涯最高の瞬間」はアテネ五輪に出場した女子ハンドボールチームの実話をもとにしたストーリー。3カ月の特訓でいっぱしのスポーツ選手に変身した女優たちの姿が大きな話題を呼んだ。メガホンを取ったのは韓国屈指の女性監督、イム・スルレ監督。イム監督との縁はこの後も続く。韓国で今年公開された「飛べ、ペンギン」がそれだ。韓国の社会問題をユーモアを交えて鋭く描写するこの映画で、彼女は息子の英語教育に熱心すぎるほど熱心な教育ママを演じている。国家人権委員会の製作による“人権キャンペーン”の映画で、興行的な成功を狙ったものではないが、こうした作品を選ぶことに映画人ムン・ソリの姿勢を垣間見ることができる。

 最後に、今後出演してみたい作品のジャンルを聞いた。

 「成熟した大人のメロドラマでしょうか。これまでメロドラマにはほとんど出たことがありません。愛の痛みも少しは理解できる年齢になりましたから、一度はしてみたいですね」

 数々の受賞歴にも満足せず、新たなチャレンジを続ける彼女。次の作品も楽しみだ。

(文・芳賀恵)

写真上:「審査では議論の末に自分の考えが変わったり、映画祭そのものの意義を徹底的に話し合ったり。とても勉強になった」と話すムン・ソリ=札幌市内で10月14日、「インタークロス・クリエイティブ・センター」提供
写真中:札幌国際短編映画祭の審査員たちと=同10月17日、筆者撮影
写真下:「愛の痛みも少しは理解できる年齢に。いつか大人のメロドラマにも」=同10月14日、「インタークロス・クリエイティブ・センター」提供
posted by 映画の森 at 00:00 | Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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