2009年01月29日

「ザ・クリーナー 消された殺人」 死の痕跡消す“清掃員”

ザ・クリーナー 消された殺人1_250.jpg

 サミュエル・L・ジャクソン演じる主人公・トムのナレーションに導かれて映画は始まる。ある女性が自宅で亡くなった母親の死体を見つけ、葬儀から遺産相続のプロセスが映像だけで矢継ぎ早に見せられる。死体が回収された汚れた現場。清掃員の仕事ぶりが、タイトル・バックと共に軽快に描かれる。

 元警官でもあるトムの仕事は、犯罪や事故現場から警察が立ち去った後、血痕など取り除く特殊な作業だ。そんなトムの元に、ある殺人現場の清掃依頼が舞い込む。依頼書に記載された現場は無人の大邸宅。植木鉢の下に隠された合鍵で現場に入り、殺人の痕跡を完璧に除去する。ところがトムは翌日、合鍵を持ち帰ってしまったことに気づき、再び邸宅を訪問。すると何ごともなかったように子供たちの誕生日会が開かれ、邸宅の女主人・アンが応対に出てくるが、清掃依頼はおろか殺人についても知らなかった。「家を間違えた」と言い訳し、その場を立ち去るトム。依頼主が架空人物と突き止め、さらに邸宅の主で名士のジョン・ノーカットが“行方不明”だとテレビ報道で知る。

 犯罪や事故現場の清掃業に目をつけた点が面白い。“クリーナー”という職業が出てくる映画で思い出すのは、「二キータ」(90)。ジャン・レノが演じた“掃除屋”だ。殺し屋が殺した死体を処理するプロで、この役は後に「レオン」(94)へと発展する。同じようなキャラクターで「エイリアンズVS.プレデター」(07)で登場する死体処理専門のプレデター“ザ・クリーナー”もある。前の2作品のキャラクターは直接死体を処理するプロなのに対し、今回の主人公は死体回収後の現場を後始末する。地に足の着いたプロフェッショナルだ。

 レニー・ハーリン監督は、トムの仕事ぶりをスピーディーな細かいカット割りを駆使し、饒舌に映像で魅せる。そんな主人公のプロぶりが逆手に取られ、陰謀に巻き込まれる物語だ。ポイントは主人公が“元警官”であること。自分の処理した邸宅の主、ジョン・ノーカットが「殺人」から「失踪」へすり替わったことで、自分の危機をいち早く察知する。そして「失踪」したノーカットが警察の収賄事件の検察側証人として出廷を予定していたことを知ることで、トムは自分がはめられたことも知り、身の危険を感じ始める。サイドにトム自身が絡む警官時代の黒い過去、男手一人で育てた娘との親子愛も絡み、物語は事件の真相に近づいて行く。

 ハーリン監督は、あえて過去のできごとは映像化せず、演技とセリフで説明する手法を選んだ。観客はセリフで語られたことで筋を追いながら、脳内で再構築を強いられる。そこが難点であり、事件の真相が意外に小さくまとまってしまった。ハーリン監督と3度目の共同作品となるサミュエル・L・ジャクソンをはじめ、エド・ハリス、エヴァ・メンデス、あくの強い「ローグアサシン」(07)のルイス・ガスマンなど、役者のアンサンブルも楽しめる。血生臭い現場の清掃処理をするトム。「死者の怒りや悲しみを浄化する」行為であり、彼なりの死者に対する神聖なセレモニーでもある。スタイリッシュな映像と共に見どころである。

(文・藤枝正稔)

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「ザ・クリーナー 消された殺人」(2007年、米)

監督:レニー・ハーリン
出演:サミュエル・L・ジャクソン、エド・ハリス、エヴァ・メンデス、キキ・パーマー、ルイス・ガスマン、ロバート・フォスター

2月7日、銀座シネパトスほかで公開。
posted by 映画の森 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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