1月30日公開のミュージカル映画「マンマ・ミーア!」主演の女優、メリル・ストリープが同22日、東京・六本木で記者会見した。来日は12年ぶり。「パワーがあるミュージカル。先の見えない今だからこそ意味がある」と語った。
「マンマ・ミーア!」」は、同名舞台ミュージカルの映画化。1970年代を代表するスウェーデン出身のポップ・グループ、ABBAのヒット曲に乗せ、エーゲ海をのぞむギリシャの小島を舞台に、ストリープ演じるシングルマザーのドナと、結婚を控えた娘・ソフィ(アマンダ・セイフライド)の絆を描いている。ドナの過去の恋人で、ソフィが「自分の父親ではないか」と推測する男性三人を、ピアース・ブロスナン、コリン・ファース、ステラン・スカルスガルドが演じる。
ストリープはミュージカル映画初挑戦。会見には鮮やかなピンク地に白い刺繍入りの服で登場した。自身も一男三女の母親で「(ドナのように)子供に秘密はあるか」との質問には、「イエース」と応じて会場をわかせた。
会見での主なやり取りは以下の通り。
──歌ったり、踊ったり、飛び跳ねたりと、見ているだけで息切れしそうだった。
現場の俳優たちはみな「こんなに楽しい映画なら、ギャラはいらない」と冗談を言っていた。あまりにも素晴らしい時間で、恥ずかしいくらいみんなで楽しんだ。スタジオの大きなスピーカーで、その日撮るシーンの曲がガンガン流れる。そのおかげで毎日エネルギーを注入できた。
──ABBAの歌を聴くと、自然に体が動いてしまう。
70年代はどこのクラブに行ってもABBAの音楽がかかっていた。それから25年ほど経って、今回の出演依頼が来た時「全曲知っているから大丈夫」と思った。けれど実際は正しく記憶していなくて、“自分バージョン”に言葉を変えて覚えていたのね。現場でABBAの人たちに「違うよ」と指摘された。だから25年間、間違って歌っていた歌詞は一度さっぱり忘れて学び直したの。
──歌とダンスに本格的に初挑戦だ。
私は女優として完璧主義者と言われるが、今回は完璧なダンスを見せる必要がないと解釈した。中年になって音楽に喚起されて踊りだしたくなる感覚が出ればいい、と。音楽を聴いて体が動き出す、その喜びを表現できればいいのではないかと。
──歌については。
歌うことは大好き。これまでも映画で歌ったことはあるけれど、あくまで役柄として。今回は自分を解き放ち、自分自身の声で歌ってもいい映画だと思ったから、あらゆる束縛を解いて心から歌った。
──ロケについて教えてほしい。
ほとんどはロンドンのスタジオで撮った。雨の多い夏で、雨がスタジオのトタン屋根に当たってすごい音がしていた。音楽の音量をあげて、雨音を消しながら撮影した。その後ギリシャに移り、(代表曲)「ダンシング・クイーン」などが流れる場面の撮影が行われた。「マンマ・ミーア!」が当たったことで、当時どん底にあったギリシャの観光事業が復活した。思わぬ喜びになった。
──男性3人に愛されるヒロインを演じた。共演した三人、彼らの歌の感想は。
3人とも話の分かるいい男たち。ギリシャにそれぞれの家族を連れてきたので、和気あいあいとした雰囲気だった。 (私の元恋人の設定なのに)コリンとステランの関係があやしかった。クレイジーなユーモアのセンスが合うみたいで、意気投合していたわ(笑)。ピアースの歌については色々な意見があるけれど、彼の歌声は私の夫に似ていて、心に訴えかけてきた。(私にとっては)あれ以上に甘い声はないくらいだわ。
──舞台版「マンマ・ミーア!」のファンでもあるそうだが、映画化に際して意識したことは。
映画では舞台では見逃すような細部までクローズアップすることができる。一瞬をとらえることができる。たとえば「スリッピング・スルー・マイ・フィンガース」の曲の間に、娘の赤ん坊のころからの映像を挿入していった。そういう意味で、映画の方が自由に描写できるのかもしれない。本物の風や波の音を感じ、気分が高揚し、演技ができる。舞台にはないことだ。
──ドナはソフィに父親の存在を秘密にしていた。自分の子供に、若いころの恋愛の話をしたりするか。また(子供に)秘密は。
秘密については“イエス”。昔の恋愛について話すかは“ノー”。私の娘たちに母親として警告めいた話をしても、まったく興味を持ってくれない。話しても無駄ね(笑)。
──作品の一番好きなところは。
世界には悲しかったり、落ち込んだりすることがたくさんある。経済をみても不安材料ばかり。この映画はシンプルな境遇の中に幸せがあるのだと教えてくれる。その日その日をきちんと生きていけば、楽しい人生があると。
私が舞台版「マンマ・ミーア!」を初めて観たのは、“9.11”(2001年の米同時多発テロ)の後だった。当時はニューヨークに住んでいて、家中みんな落ち込んでいた。10歳だった末娘とその友達をミュージカルに連れていったの。最後の方には座席の上に立って子供たちが踊り出した。観客は若い人もお年寄りも、普段は冷めているような十代の若者さえ、みんな踊りながら街に出ていったわ。このミュージカルにはそういうパワーがある。先の見えない時代、「マンマ・ミーア!」を映画化することは、本当に意味があると思う。
(文・写真 吉田しのぶ)
×××××
「マンマ・ミーア!」(2008年、米)
監督:フィリダ・ロイド
製作:トム・ハンクス、リタ・ウィルソン、ビヨルン&ベニー
出演:メリル・ストリープ、アマンダ・セイフライド、ピアース・ブロスナン、コリン・ファース、ステラン・スカルスガルド、ドミニク・クーパー
1月30日、日劇1ほかで全国公開。
写真:「音楽を聴いて自然に体が動き出す喜びを表現したかった」と話す「マンマ・ミーア!」主演のメリル・ストリープ
=東京・六本木で1月22日



