キューバ革命の英雄、チェ・ゲバラの生涯で、二つの重要な時代にスポットをあてる「チェ」2部作。後編にあたる「チェ 39歳 別れの手紙」は、革命家誕生を描いた「チェ 28歳の革命」と対照的に、ゲリラ軍の後退からゲバラの死までが描かれる。
1965年3月、ゲバラは「サトウキビ農場を視察に行く」と書き残し、こつ然と姿を消してしまう。さまざまな憶測が飛びかう中、カストロはキューバ共産党中央委員会の場で、ゲバラの“別れの手紙”を公表する。映画は意外な場所から動き出す。はげ頭に眼鏡姿の“ラモン”と名乗る中年男。“ゲバラの友人”を名乗り、ゲバラの妻や子供たちと食事する“ラモン”は、変装をしたゲバラ本人だった。変装した父の姿に気付かない子供たち、夫と知りながら平静を装う妻のアレイダ。この食事はゲバラにとって、愛する家族との最後の晩餐になってしまう。ゲバラは“ラモン”のまま、66年11月にボリビアに入国する。
輝かしいゲバラの活躍を描いた前編=シネスコのワイドスクリーンから一転して、後編はやや狭いワイドスクリーンのビスタ画面に変更される。「チェ」は後編にあたる「チェ 39歳 別れの手紙」のみ製作される予定だったが、波乱の人生の説明を補足する形で56〜59年のキューバ革命、64年のニューヨーク・国連総会演説シーンが必要と判断された。撮影していくうち、2本分の映画ができあがり、2部構成になったという。
時系列を崩した「チェ 28歳の革命」とうって変わり、「チェ 39歳 別れの手紙」は、約1年間ゲバラが書き残した“ボリビア日記”に基づき時間通りに展開する。ボリビアの山中に身を潜めるゲリラ軍とゲリラを一掃しようとする独裁政権下のボリビア大統領。終わりのない戦いが描かれる。食料も医薬品も武器や弾薬も底をつき、ゲリラ軍の統制力も落ち始め、無力化していくメンバーの姿を淡々とカメラは追っていく。監督は映画的なけれんみを排し、ドキュメンタリーのように撮る。しかし、、ゲバラの死だけは違うアプローチをとる。ボリビア軍に捕らえられ処刑されるまでを、ゲバラ本人の主観映像で描く。銃弾を撃ち込まれ、そのまま床に倒れるゲバラの目線と、悶絶する声だけで死を見せる、ソダーバーグ監督の演出が冴える。
キューバ革命の中心人物であるカストロとは対照的に、いばらの道を進んだゲバラ。志半ばで最期を迎えてしまい、死によって伝説の英雄になり、人々の心の中で生き、影響を与え続けている。ゲバラを演じ、製作も務めたベニチオ・デル・トロの熱の入れようも相当なもの。ソダーバーグ監督と組んだ「トラフィック」(00)以前から企画を温めてきたといい、ゲバラを柔軟に演じきっている。世界的不況で見えない未来。不安を感じる現代だからこそ、人々がゲバラのようなカリスマを欲しているのかもしれない。
(文・藤枝正稔)
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「チェ 39歳 別れの手紙」(2008年、スペイン・仏・米)
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ベニチオ・デルトロ、デミアン・ビチル、ジュリア・オーモンド、フランカ・ポテンテ、カタリーナ・サンディノ・モレノ、ロドリゴ・サントロ
1月31日、日劇PLEXほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
作品写真:(C)2008 Guerrilla Films, LLC-Telecinco Cinema,S.A.U. All Rights Reserved



