2009年01月07日

「チェ 28歳の革命」 “革命家・ゲバラ” 誕生まで

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 キューバのゲリラ指導者、チェ・ゲバラ。生涯で重要な二つの時代にスポットをあて、人物像をあぶり出す「チェ」2部作。第1部にあたる「チェ 28歳の革命」は、革命家が誕生する輝かしい瞬間をとらえた作品だ。主演は「トラフィック」のベニチオ・デル・トロ。監督は「オーシャンズ」シリーズのスティーブン・ソダーバーグである。

 1964年、ニューヨーク。米国人女性ジャーナリストのインタビューに答えるゲバラの白黒映像で映画は幕を開ける。時系列を前後させながら話は進行する。52年のキューバの記録映像、55年7月のメキシコ。持病のぜん息を抱えながら「貧しいラテン・アメリカの人々を救いたい」と南米大陸を旅するアルゼンチン人医師のエルネスト・ゲバラと、独裁政権に苦しむ故国・キューバで革命を決意するフィデル・カストロは、フィデルの弟・ラウルを介して出会う。わずか82人で海を渡り、2万人に及ぶキューバ政府軍に戦いを挑むカストロの無謀な作戦に、参加を決意するゲバラだった──。

 軍医としてゲリラに加わったゲバラは、“チェ”の愛称で呼ばれた。山の農民たちに礼を尽くし、無償で健康診断を行い、若い兵士に読み書きを教える。軍の規律を守らない裏切り者には容赦しないが、負傷者には敵味方の区別なく救いの手を差し伸べる。過酷な山中のゲリラ活動で、彼の人物像が浮かび上がる。ゲバラは類まれなる統率力が認められ、司令官として部隊を率いるまでになっていた。

 「チェ 28歳の革命」は、56〜59年の3年間に焦点を絞り、軍医のゲバラが司令官になり、キューバの軍事独裁政権を崩壊させるまでと並行して、64年12月にニューヨークで開催された国連総会でのインタビューとスピーチをドキュメンタリー・タッチで描く。特にニューヨークのシーンは、すべて手持ちカメラの白黒記録映像調に作られ、“フェイク・ドキュメンタリー”的なテイストをかもし出している。

 ソダーバーク監督はゲバラのたどった道を、説明的表現を排し、時系列をバラして展開させる。観客はあらかじめ予備知識が必要だろう。フィデル・カストロのインタビュー映画「コマンダンテ」(03)は、キューバ革命史とともにゲバラのエピソードも紹介されていた。予習にはちょうどいい作品だ。

 キューバ革命のかなめとなる「サンタクララの戦い」をクライマックスに据えた「チェ 28歳の革命」。列車転覆シーンは「アラビアのロレンス」と共通するカタルシスを感じさせ、映画は革命家・ゲバラの誕生を輝かしくとらえて幕を引く。

 現在“チェ・ゲバラ”はファション・アイコンとして一人歩きしてしまい、イメージ先行で崇められている傾向にある。ぜひ本作で“革命家 チェ・ゲバラ”の本質を見てほしい。輝かしい「チェ 28歳の革命」と対照的に、第2部の「チェ 39歳別れの手紙」では、苦戦を強いられるゲリラ軍とゲバラの死が描かれる──。

(文・藤枝正稔)

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「チェ 28歳の革命」(2008年、スペイン・仏・米)

監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ベニチオ・デルトロ、デミアン・ビチル、ジュリア・オーモンド、フランカ・ポテンテ、カタリーナ・サンディノ・モレノ、ロドリゴ・サントロ

2009年1月10日、日劇PLEXほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

作品写真:(C)2008 Guerrilla Films, LLC-Telecinco Cinema,S.A.U. All Rights Reserved
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