俳優を夢見るヤクザのガンペ(ソ・ジソブ)と、気性の激しいスター俳優のスタ(カン・ジファン)。住む世界のまったく違う二人が、高級クラブではちあわせる。ガンペはサインを求めるが、スタはあからさまに見下した態度を取る。出会いは最悪だった。
しかし、スタは傲慢さが共演者に嫌がられ、映画製作に行き詰まってしまう。そこでガンペに共演を持ちかけた。裏社会で生きるガンペは、夢だった俳優の仕事に心が揺れる。そこである条件を出し、出演を承諾する。条件は「二人が戦うシーンは、本気で勝負する」というものだった。撮影が始まった。ひょんな形で夢をかなえたガンペは演じる喜びを感じていた。共演女優のミナ(ホン・スヒョン)とも親密になり、つかの間の幸せを感じる日々。ガンペの中で何かが変わり始めていた。
一方、スタは“本気の勝負”に向け、トレーニングに余念がない。ところがある日、恋人との密会現場の盗撮テープが届いて脅迫される。スターであるがゆえ、コソコソ密会していた彼女との仲も、うまくいかなくなっていた。スタはヤクザの手荒なやり方に困惑しながらも、ガンペの助けを借りて問題を解決する。そして、兄のように慕っていたマネージャーが、事件にかかわっていたと知り、ショックを受けるのだった。
撮影は順調に進み、クライマックスの対決シーンを残すのみとなった。しかし、ガンベは組織内で問題を抱え、これ以上の出演のは無理と判断。降板を申し出る。再び共演者を失い、途方にくれるスタ、ミナ、監督。そこへ傷だらけのガンペが戻ってくる。それぞれの思いを胸に、クライマックスの撮影が始まった──。
今年9月に韓国で公開された「映画は映画だ」。主演にソ・ジソブ、カン・ジファンと注目の俳優が配され、男と男が真剣勝負に挑む骨太なアクション映画だ。“ヤクザのような映画俳優”と“映画俳優を夢見るヤクザ”という設定で、二人の異なる生き様を描き出す。兵役終了後初の本格映画復帰となるソ・ジソブは、持ち味である物憂げな表情で、非情になりきれないヤクザを好演している。荒々しいガンペの内に秘めた人間らしさと、微妙な心の変化を演じ切った。スタを演じたカン・ジファンは、ドラマの優しいイメージを一転。気性の荒い役に体当たりで挑み、新境地を切り開いた。
二人が本気で戦うクライマックス、干潟での対決は圧巻。泥まみれでぶつかり合い、迫力あるシーンになった。見どころのアクションなどを、劇中映画のワンシーンとして見せる手法も面白い。本編のストーリーの邪魔にならず、凝った演出だ。
「映画は映画だ」はタイトル通り、映画への思いがぎっしり詰まっている。韓国の鬼才、キム・ギドク監督が製作し、ギドク作品で助監督を務めてきたチャン・フン監督のデビュー作。低迷する韓国映画界で、低予算・高品質が光った。主演二人が出演料を製作費に回したことも話題となり、今年韓国の映画賞で多くの賞を獲得した。
(文・岩渕弘美)
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「映画は映画だ」(2008年、韓国)
監督:チャン・フン
出演:ソ・ジソブ、カン・ジファン
2009年春、シネマスクエアとうきゅうほかで全国公開。
作品写真:
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