キューバ革命の指導者、チェ・ゲバラの半生を描く伝記的2部作「チェ 28歳の革命」「チェ 39歳 別れの手紙」主演のベニチオ・デル・トロ、スティーブン・ソダーバーグ監督が12月18日、東京・御茶ノ水で記者会見した。伝説の革命家・ゲバラを熱演し、今年のカンヌ国際映画祭で主演男優賞を獲得したデル・トロ。「ゲバラは真実を求める人だった。自らを触発する何かを、映画から受け取ってもらえれば」と語った。
今年はゲバラ生誕80年、来年はキューバ革命から50年。「チェ 28歳の革命」ではキューバ到着から革命成功への道程、「チェ 39歳 別れの手紙」では盟友・カストロとの決別、ボリビアで命を落とすまでが、計4時間半にわたり描かれる。来日はデル・トロが4年ぶり、ソダーバーグ監督は15年ぶりで、それぞれ2回目。
記者会見は明治大学構内で、学生たちも参加して行われた。伝説の革命家を演じたことについて、デル・トロは「(ゲバラに自分を)似せることにこだわったら、きっと正気を失っていただろう」と話し、「実在した人物に『なる』ことは不可能だ。ゲバラについて学んだことを、自分の解釈で役柄に投影させた」と語った。また、ゲバラと自分の共通点について「彼は『真実を求める人』だった。彼を描くことに真剣に取り組んだ我々の姿勢は、彼と似ているのではないか」と語った。
カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞した「セックスと嘘とビデオテープ」(89)や、同じくデル・トロ主演で米アカデミー監督賞に輝いた「トラフィック」(00)など、常に異なる手法とテーマで観客を魅了してきたソダーバーグ監督。自らの撮影スタイルについて「映画監督には2種類いる。いつも同じスタイルで撮る人。物語を選んでからスタイルを決める人。私は後者だ」と説明。「チェ 28歳の革命」は「キューバ革命についてゲバラが著書に残した“声”をなぞりたかった。革命成功の力学を俯瞰し、いわゆる普通の撮り方で作った」としたのに対し、「39歳 別れの手紙」は「ゲバラのボリビアでの日記が下敷きだ。当時の彼は全体を見る目を失い、次に起こるできごとを予測できなかった。観客をハラハラさせ、脅威を感じさせるようにした」と話した。さらに「『チェ』2部作は、一つの映画の二つの部分」と説明。「片方を作る際には残る一方を意識し、対比させるよう気を配った」と振り返った。
伝説的な革命の指導者として、今も人々を魅了し続けるゲバラ。リーダーが必要とする要素を、デル・トロは「まず相手の話を聞くこと。訴えに耳を傾けること」。もしゲバラが存命で「チェ」2部作を見た場合、どんな感想をもらいたいかと問われ「喜んでほしい、というのはおこがましいね。作品にかかわった人々の努力を認めてもらえればうれしい」と話した。
続いて、会場の学生たちと質疑応答が行われた。映画作りにおける信念について、じっと答えを探したソダーバーグ監督。「見た人に『価値ある時間だった』と思ってもらえる作品を作りたい。私はしばしば芸術の役割について考える。人はみな物語を語るのが好きだ。世界と人生に対処する力を得られる、と考える。しかし、それは芸術だけができるものか。私が持つ技術は映画を作ることだけだが、もし別の手段が見つかったら試してみたい」と話した。
さらに、会場の学生たちをはじめとする、若い世代に向けメッセージを送った二人。デル・トロは「夢を追い続けてほしい。間違っていると感じたら、立ち上がり声を上げてほしい。世界はまだ変わる可能性がある。映画から自らを触発する何かを学んでもらえれば」と呼びかけた。同様に「行動しなければ何も変わらない」と話したソダーバーグ監督。「大切なことは二つ。同志を探すこと。何かに反対する場合は、代案を用意すること。どちらも1960年代の社会運動に欠けていたため、当時の素晴らしいエネルギーは、体制に飲み込まれてしまったと思う」と語った。
(文・写真 遠海安)
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「チェ 28歳の革命」「チェ 39歳 別れの手紙」(2008年、スペイン・仏・米)
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ベニチオ・デルトロ、デミアン・ビチル、ジュリア・オーモンド、フランカ・ポテンテ、カタリーナ・サンディノ・モレノ、ロドリゴ・サントロ
「チェ 28歳の革命」は2009年1月10日、「チェ 39歳 別れの手紙」は同1月31日、日劇PLEXほかで全国公開。
写真1:「チェ 28歳の革命」「チェ 39歳 別れの手紙」主演のベニチオ・デル・トロ。「(ゲバラに自分を)似せることにこだわったら、きっと正気を失っていただろう。彼について学んだことを、自分の解釈で役柄に投影させた」と話した=東京・御茶ノ水で12月18日
写真2:北京五輪柔道金メダリスト・石井慧(左)が、ゲストとして登場。ソダーバーグ監督(中央)を囲んで=同



