スペインの国民的ベストセラー小説を、壮大なスケールで描く「アラトリステ」。監督は「ウェルカム! ヘヴン」のアグスティン・ディアス・ヤネス、主演は「イースタン・プロミス」のヴィゴ・モーテンセンだ。
17世紀のスペイン。13歳から腕だけを頼りに、死と隣り合わせの戦場を生き抜いてきた剣士・アラトリステ(ヴィゴ・モーテンセン)。フランドルの戦いで傷を負い、瀕死の友・ロペから「息子を頼む」と約束される。1年後。戦場からマドリードに戻ったアラトリステは、ロペの息子・イニゴを引き取り、従者として育てる。そんなおり、アラトリステに「イギリスから来た異端者二人を殺せ」という奇妙な依頼が舞い込む。そこにはスペイン国王をも巻き込む、宮廷の陰謀が隠されていた。アラトリステはきな臭さを感じ取り、暗殺寸前で思いとどまる。これが原因でアラトリステは、暗殺を依頼した国王秘書官とその部下の殺し屋に狙われ、監視の目にさらされる──。
歴史的事実や実在の人物の間に、架空の主人公・アラトリステを登場させるユニークな物語。主役は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで人気が爆発したヴィゴ・モーテンセン。全編スペイン語で演じている。1622年のフランドル戦いから始まり、1643年のロクロワの戦いまで、スペインのたどった争いの歴史を背景にしている。大勢の登場人物とハイテンポな展開。王族、政治、宗教など様々な要素が絡み合う。
ヴィゴ・モーテンセンはさすがの迫力だ。スペイン人俳優に囲まれながら、独自のカリスマ的存在感を醸し出し、幾多の戦を乗り切った戦士像を作り出した。戦場では誇り高き傭兵、平時はマドリードで剣客として生きる、最強の剣士である。右手に剣、左手に短刀をかざす独特の二刀流。敵と剣を交える姿に、戦いの美学がにじみ出る。ストイックな性格を現すように、現在は人妻となった過去の恋人、女優のマリアを思い続けるアラトリステ。マリアをめぐっては、フェリペ国王と恋敵となってしまう。ロペの息子・イニゴと、スペイン王妃の女官・アンヘリカと秘めた愛も、ロマンチックに描かれる。
もう一つの見どころは、スペイン映画史上最高の製作費を費やして再現された戦闘シーンだ。冒頭のフランドルの戦い、要塞都市・ブレダ陥落、国王の金塊を奪還する船舶同士の戦い、そしてクライマックスのロクロワの戦い。敵の砲撃でが大勢の戦士が死んでいく。すさまじい肉弾戦だ。軟化姿勢を示したフランス軍に対し、アラトリステとスペイン軍は、断固戦う道をとる。その姿は伝説の英雄のようである。
(文・藤枝正稔)
×××××
「アラトリステ」(2006年、スペイン)
監督:アグスティン・ディアス・ヤネス
出演:ヴィゴ・モーテンセン、エドゥアルド・ノリエガ、ウナクス・ウガルデ、ハビエル・カマラ、アリアドナ・ヒル、エレナ・アナヤ
12月13日、日比谷・シャンテシネほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
作品写真:(c)Estudios Picasso / Origen PC / NBC Universal Global Networks Espana 2006



