第23回東京国際映画祭が10月23日から9日間、東京・六本木ヒルズをメーン会場に開催された。コンペティション部門最高賞のサクラグランプリはニル・ベルグマン監督の「僕の心の奥の文法」(イスラエル)、審査員特別賞は新藤兼人監督の「一枚のハガキ」(日本)、最優秀芸術貢献賞は李玉(リー・ユー)監督の「ブッダ・マウンテン」(中国)が獲得。アジアの風部門の最優秀アジア映画賞にシン・スウォン監督の「虹」(韓国)、同部門のスペシャル・メンション賞にウー・ミンジン監督の「タイガー・ファクトリー」(マレーシア・日本)、日本映画・ある視点部門の作品賞に深田晃司監督の「歓待」が選ばれた。
「僕の心の奥の文法」のニル・ベルグマン監督は、2002年の「ブロークン・ウィング」での同賞獲得に続き、8年ぶり2度目の快挙。「映画作りで重要なのはプロセスで、賞ではないと言ってきた。ただ、受賞作品はイスラエルでも成功を収め、賞の重要性にも気付いた。自分の映画がどう受け止められているか実感できるからだ。本当にありがとうございました」と喜びを語った。
「ブッダ・マウンテン」のリー・ユー監督は「(東京国際映画祭には)初参加。東洋の人たちに共感してもらいたいと思って作ったので、賞を頂いて本当に満足している」とコメントした。
「虹」のシン・スウォン監督は「大変苦労して撮ったが、苦労が実った。映画祭の間も次が撮れるか悩んでいたが、賞を得て力がわいてきた。これで満足せず、ますます良い作品を作れれば」とコメントした。
「タイガー・ファクトリー」製作のエドモンド・ヨウは「私は東京に住んでいて、この映画は日本とマレーシアの共同作。両国のより深い友好関係に役立てばと願っている。(10月の)釜山国際映画祭で『タイガー・ファクトリー』のスピンオフ映画『インハレーション』が受賞し、うれしいことが重なった」とコメントした。
「歓待」の深田晃司監督は「大変驚き、感謝している。俳優とスタッフ、ロケ地の墨田区の皆さんに感謝したい。下町の家にいろいろな人を招き入れる物語は、マルクス兄弟の「オペラは踊る」にヒントを得た。ここ1〜2年、日本に外国からの労働者が入ってきて、知らない文化への恐怖心が排他的な行動となって表れてしまいがち。だが、基本的には夫婦の話として見てほしい」とコメントした。
コンペティション部門審査委員長を務めたニール・ジョーダン監督は、「審査委員は小さな劇場で作品を見た。素晴らしい体験で、次から次へと見ていると、人間が作っていることを忘れてしまう。選ぶのに大変苦労したが、納得してもらえると思う」と感想を語った。また、審査員特別賞を受賞した新藤兼人監督に、「16歳のころにダブリンで、新藤監督の映画を2本見て非常に感銘を受け、今も心に残っている。当時はまさか自分が映画を作るとは思っていなかった。(新藤)監督の作品が含まれるコンペ部門で審査委員長を務め、賞を贈ることができて幸せだ」と述べた。
受賞作は次の通り。
<コンペティション>
・東京 サクラ グランプリ 「僕の心の奥の文法」 (監督: ニル・ベルグマン)
・審査員特別賞 「一枚のハガキ」 (監督: 新藤兼人)
・最優秀監督賞 ジル・パケ=ブレネール (「サラの鍵」)
・最優秀女優賞 范冰冰(ファン・ビンビン) (「ブッダ・マウンテン」)
・最優秀男優賞 王千源(ワン・チエンユエン) (「鋼のピアノ」)
・優秀芸術貢献賞 「ブッダ・マウンテン」 (監督:リー・ユー)
・観客賞 「サラの鍵」 (監督:ジル・パケ=ブレネール)
<TOYOTA Earth Grand Prix>
・TOYOTA Earth Grand Prix 「水の惑星 ウォーターライフ」 (監督: ケヴィン・マクマホン)
・TOYOTA Earth Grand Prix 審査員特別賞 「断崖のふたり」 (監督: ヨゼフ・フィルスマイアー)
<アジアの風>
・最優秀アジア映画賞 「虹」 (監督:シン・スウォン)
・スペシャル・メンション 「タイガー・ファクトリー」 (監督: ウー・ミンジン)
<日本映画・ある視点>
・作品賞 「歓待」 (監督: 深田晃司)
(文・遠海安)
写真1:サクラグランプリを獲得したニル・ベルグマン監督(左)と主演女優のオルリ・ジルベルシャッツ=いずれも同映画祭事務局提供
写真2:「僕の心の奥の文法」
写真3:「一枚のハガキ」
写真4:「ブッダ・マウンテン」
写真5:「虹」
写真6:「タイガー・ファクトリー」
写真7:「歓待」
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