巨大財閥「W(ウィンチ)」・グループ総師の父が暗殺され、後任に選ばれたラルゴ・ウィンチ。望まぬ権力を手に入れた彼は、莫大な遺産を巡り、世界経済を揺るがす決断を下す──。
ベルギーのジャン・ヴァン=アムの小説が原作の「ラルゴ・ウィンチ」。2001年にテレビシリーズ、08年に前日譚(たん)となる映画(日本未公開)が作られたフランスの人気作品である。監督は前作に続き「アントニー・ジマー」(アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップ主演で「ツーリスト」として米リメイク)のジェローム・サル、主演も前作と同じトメル・シスレー、「氷の微笑」のシャロン・ストーンも出演している。ロシア、香港、スイス、タイ、ミャンマーを舞台に、資産530億ドルのヒーローは、“ジェームズ・ボンドの大富豪版”といったところだ。
香港を拠点とする世界有数の巨大財閥、ウィンチ・グループ。創設者のネリオ・ウィンチが暗殺され、養子のラルゴが財産を受け継ぐ。ラルゴは資産を狙われ、敵から命を狙われる。キーパーソンは、ラルゴを演じるトメル・シスレーに尽きる。手足が長く細身のシスレーが、スタントなしで演じたリアル・ファイト、カー・アクション、スカイ・アクション。「007」シリーズをも超える臨場感だ。
カギを握る舞台は、ラルゴが3年前に暮らしたビルマ(現ミャンマー)だ。放浪の旅でビルマにたどり着いたラルゴは、村の美しい娘・マルナイと恋におちる。しかし、村には軍の魔の手が迫っていた。危機を察知したマルナイは、ラルゴを村から追い払う。ラルゴは雇われ運転手のシモンと国境を越える。物語は現在と過去が交差し、やや分かりづらい構成だ。ミャンマー軍事政権を取り上げた作品は、シルベスター・スタローン監督、主演「ランボー最後の戦場」(08)以来だろう。
そんなラルゴに、国際刑事裁判所は「大虐殺に関与した」と容疑をかける。追及するフランケン検察官をシャロン・ストーンが演じる。彼女を有名にした“足組み換えポーズ”もチラリと再現。現在と過去を行き来しながら、事件の核心が明らかになる。
前作は日本未公開だが心配無用。「007」シリーズ同様1話完結のため、前作を知らなくても十分楽しめる。そんな世界観をうまく作り出したのは、音楽を担当したアレクサンドル・デスプラだ。パリ出身の彼は「英国王のスピーチ」、「ツリー・オブ・ライフ」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」、「ゴーストライター」と話題作を多く手がけている。「007」シリーズの作曲家、ジョン・バリーのオーケストレーションをうまく吸収。デジタルビートとオーケストラを融合させ、“ジョン・バリー風”の流麗なオリジナル・スコアを書き上げた。視覚だけでなく聴覚でも「007」テイストを構築することに成功している。
「TAXi」、「トランスポーター」、「96時間」など、現代フレンチ・アクションの勢いを引き継ぎながら、ビルマ大虐殺という史実を絡めたリアルな作風。「007」ばりの痛快アクションも兼ね備え、誰もが納得できるクオリティーに仕上がっている。
(文・藤枝正稔)
「ラルゴ・ウィンチ 裏切りと陰謀」(2011年、フランス・ベルギー・ドイツ)
監督:ジェローム・サル
出演:トメル・シスレー、シャロン・ストーン、ウルリッヒ・トゥクール、ローラン・テルジェフ
10月29日、銀座シネパトスほかで公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://largo-winch.net/
作品写真:(C)2011-LW Production-Wild Bunch-Climax Films-Wild Bunch Germany-TF1 Films Production-Casa Productions-RT BF



