アフリカ、広大なサバンナ。命あふれる“プライド・ランド”を治めるライオンの王・ムファサに、息子のシンバが誕生する。幼いシンバは生きるため大切なことを父から学ぶ。ところがある日、王の座を狙うムファサの弟・スカーのわなで、シンバはランドを追われることに。彼を救ったのは、旅で出会った仲間たち。成長したシンバは、自分の使命に目覚めていく。1994年に製作されたディズニー・アニメーションの人気作品「ライオン・キング」が、最新のデジタル技術で3D化された。
シンバの誕生を動物たちが祝う歌「サークル・オブ・ライフ(生命の賛歌)」をバックに、ミュージカル調かつダイナミックな演出で物語は幕を開ける。作品のテーマは誕生から死、死から誕生のサイクル。さらにシェークスピアの「ハムレット」に影響を受けた復讐劇が、ディズニー作品らしい愛らしいキャラクターとユーモア、時おり挿入されるミュージカル・パートを使って描かれる。
動物キャラクターたちは、人間を擬人化している。偉大な王のムサファ。弟のスカーは兄の地位と名誉と権力をねたみ、ハイエナたちを手下に虎視眈々と王位を狙っている。シンバは王子としてすくすく育ったためか、世間知らずで何事にも無頓着。スカーの言葉をすぐに信じてしまう天然王子である。そんな性格を見越して、スカーは悪魔のささやきでシンバの心をコントロールする。まんまとスカーのわなにはまったシンバは、大暴走するヌーの大群に巻き込まれ絶体絶命に。間一髪でムサファに救われる。しかし、逆にムサファが暴走に巻き込まれて瀕死となる。チャンスとみたスカーは助けを求めるムサファを谷底に落とし、その死をシンバのせいにして、プライド・ランドから追放してしまう。邪魔者だったムサファとシンバ親子がいなくなり、王となったスカー。絶望したシンバは砂漠で倒れるが、ミーアキャットのティモンと、彼の相棒でイボイノシシのプンバァに救われる。
製作から17年の月日が流れ、ディズニー・アニメーションも3DCG作品が主流となった。今改めて見ると、手書きアニメは非常にシンプルに感じられる。親から子へと受け継がれる生命のサイクル──高らかに歌い上げられるメインテーマのほか、弱肉強食、食物連鎖をさりげなく語る。嫉妬、支配欲、復讐など、ファミリー映画にふさわしくない裏テーマを、避けることなく真正面から描き、作品に深みを与えている。父の死で罪悪感に押しつぶされそうになる主人公を、スワヒリ語の“ハクナ・マタタ(なんとかなるさ)”で解放する。前向きなディズニー・アニメらしい演出だ。子供の誕生というシークエンスを使い、オープニングとエンディングにまったく同じ演出術を用い、生命のサイクルを象徴させた描写が光る。
オリジナルの2D版をデジタル技術で3Dへ変換しているため、3Dを前提に製作された作品と比べてしまうと厳しいものはある。壮大な世界観を表現するため必要だったのだろう。ディズニーは特にうたっていないが、サウンドもリミックスされたようだ。5.1chデジタルサラウンドを意識した音の分離と方位感、重低音は素晴らしい。リニューアルされたサウンドは、第67回米アカデミー賞主題歌賞を受賞した作詞家のティム・ライスと、作曲家のエルトン・ジョンのミュージカル・ナンバー。作曲賞を受賞したハンス・ジマーのスコアに改めて再評価する機会を与え、観客を魅了する。
(文・藤枝正稔)
「ライオン・キング ディズニー デジタル3D」(2011年、米国)
10月8日、3D限定公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://www.disney.co.jp/
作品写真:(c)Disney All rights reserved



