イタリア・ナポリを拠点とする実在の巨大犯罪組織“カモッラ”の、恐るべき実態に迫った「ゴモラ」。冒頭のシーンが衝撃的だ。日焼けサロンで紫外線を浴びる数人の男たち。おそらく組織の幹部クラスだろうか。彼らが突然何者かに襲われ、あっという間に射殺されてしまう。なぜ殺されたのか。殺したのは何者なのか。一切、説明はない。ただ、殺害される様子が映し出されるのみである。組織ではそれなりの出世を遂げたであろう男たち。悲惨な末路を映画はいきなり示し、見る者を慄(りつ)然とさせる。
しかし、“カモッラ”の真の恐ろしさを描いているのは、むしろ後に展開するいくつかのエピソードである。
暴力抗争を身近に見ながら育った少年トトは、組織の一員となる夢を実現するが、たちまち苛酷な現実を思い知らされる――。
ハリウッドのギャング映画に憧れるマルコとチーロは、武器を盗んで有頂天となるが、目に余る行動が組織の逆鱗にふれる――。
トトは防弾チョッキを着て撃たれる“入団テスト”に挑む。勇気と胆力を証明した彼は、めでたく組織のメンバーとして認められる。だが、テストにパスしたことは、死への近道を選択したも同然なのだ。
マルコとチーロは、少年期特有の自己過信から、無法な行動をエスカレートさせていく。いきがって女を買おうとするも軽くあしらわれ、結局は大人たちの狡猾なわなにはまり、厄介払いされてしまう。海岸で銃を撃ちまくり、天下を取ったような気分に酔いしれていた二人が、死体となりショベルカーでさらわれる無残さ。
彼ら少年たちが暮らすのは、スラム化した巨大な集合住宅だ。“カモッラ”のメンバーや家族が多く住んでおり、ドラッグの密売をはじめ、常にさまざまな犯罪が横行している。
犯罪が日常化した環境で、彼らが“カモッラ”の予備軍となっていくのは必然的な流れだ。要するに、ここは彼らを一人前の“カモッラ”へと育てるインキュベーター(孵化器)なのだ。こうして“カモッラ”は再生産され続けるのである。
さらに“カモッラ”が怖いのは、彼らがあらゆる業界へと触手を伸ばしていることだ。アパレル産業や産業廃棄物処理業に関与し、多額の資金を稼ぐエピソードが語られるが、傍目には実態が見えにくいところが不気味である。誰が“カモッラ”なのかを見分けるのは容易ではない。従って彼らを排除するのは極めて難しい。暗然たる気分にさせられる作品だ。
ロベルト・サヴィアーノのノンフィクション小説「死都ゴモラ」の映画化。新鋭マッテオ・ガッローネが感傷を排したリアリズムで見事に映像化し、2008年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞している。
(文・沢宮亘理)
「ゴモラ」(2008年、イタリア)
監督:マッテオ・ガッローネ
出演:サルヴァトーレ・アブルッツェーゼ、ジャンフェリーチェ・インパラート、トニ・セルヴィッロ、カルミネ・パテルノステル、サルヴァトーレ・カンタルーポ、マルコ・マコル、チロ・ペトローネ
10月29日、渋谷シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://www.eiganokuni.com/gomorra



