「あれほど美しいものを、私は見たことがなかった」
第24回東京国際映画祭で、天才舞踊家の世界を描いた3D映画「Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」が10月25日、特別招待作品として上映され、ヴィム・ヴェンダース監督が舞台あいさつした。ヴェンダース監督は、今は亡きピナについて「もう一緒に映画を作ることはできないが、ピナのダンサーたちとともに、ピナのために、この作品を作るべきだと思った」と語った。
「1985年に初めてピナの舞台を見た瞬間から、彼女の映画を作りたいと思った。あれほど美しいものを、それまで見たことがなかった。翌日ピナに会いに行った私は、興奮して“あなたの映画を作らせてほしい”と願い出た。ピナも乗り気だった」
上映前の舞台に登場したヴェンダース監督は、映画化のきっかけと、バウシュとの出会いから話し始めた。
「しかし、自分から映画化を切り出しながら、私はピナの舞踊をどう映像にすべきか、よい方法が思いつかず頭を抱えていた。ピナは会うたびに“早く映画を作りましょう”と言ってくれるが、私は壁にぶつかってしまった。ヒントを求めていろいろなダンス映画も見てみた。しかし、答えは見つからなかった。ピナは“準備できた?”と尋ねる。私は“ノー”と返す。そんなやり取りが何年も繰り返された」
「ヒントはU2のコンサート映像。すぐにピナに電話した」
20年後、ヴェンダース監督がようやく見つけた答え。それは3Dだった。
「1960年代に3D映画が登場したが、すぐに廃れた。私もすっかり忘れていた。ところが、4年半ほど前に見た新しいデジタル3D映画に、とても感銘を受けた。それはU2のコンサート・フィルムだった」
「これが答えだ」。確信したヴェンダース監督は、上映終了を待つのももどかしく、バウシュに電話し「映画化の方法が分かったよ」と伝えたのだった。
「ところが、撮影に入る2カ月前、ピナは急死してしまった。ショックだった。ピナがいなくなってしまった以上、映画は断念しなくてはいけないと思った」
しかし、バウシュが亡くなった後も、ダンサーたちは泣きながら踊り続けていた。その姿に打たれたヴェンダース監督は、再び映画化を決意したという。
「ピナと一緒に映画を作ることはできないが、ピナのダンサーたちとともに、ピナのために、この映画を作るべきだと思ったんだ」
(文・写真 沢宮亘理)
「Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」(2010年、ドイツ・フランス・イギリス)
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ピナ・バウシュ、ヴッパタール舞踊団
2012年2月25日、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://pina.gaga.ne.jp/
作品写真:(c)2010 NEUE ROAD MOVIES GMBH, EUROWIDE FILM PRODUCTION



