2011年11月20日

「吉祥寺の朝日奈くん」 周到な伏線 鮮やかな種明かし “爽やかな恋”の行く先は?

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 若者が年上の女性に恋をした。女性はカフェに勤めるパートの人妻。若者はそのカフェに通う常連客。そんな二人が、ある日、カップル客の大ゲンカをきっかけに急接近する。さて、若者の一途な思いは、彼女に受け止めてもらえるのだろうか――。年上の女性と初心な若者の“胸キュン”なラブストーリーか。素直に見るならば、最初は誰もがそう思うに違いない。ところが、この映画、途中からガラリとムードが一変し、思いがけない方向へと展開していくのである。

 主人公は、朝日奈ヒナタ(桐山漣)というミステリー小説好きの若者。以前は小劇場で役者をしていたが、挫折したのか、現在はフリーター生活を送っている。そんなヒナタがひそかに思いを寄せるのが、山田真野(星野真里)という女性。サラリーマンの夫と一人娘がいる人妻だ。二人は、カップルのケンカ騒ぎでケガをしたヒナタを真野が手当てしたことがきっかけで、急速に親しくなる。

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 人妻だってことは承知の上。別に夫から奪おうなんて野心はヒナタには微塵もないようである。ギラギラしていない、爽やかな若者。だから、真野も彼に対して警戒心を抱かず付き合えるのだろう。二人は真野の娘を伴って動物園に行ったり、演劇を見に行ったりして、楽しい時間を過ごす。ほのぼのとした青春ラブストーリーの骨格。

 だが、ところどころで「あれ?」と思わせる瞬間がある。たとえば、ヒナタにはバイト先で親しくなった先輩(要潤)がいて、たまに会っては奢ってもらったりしているのだが、あるとき、その先輩がヒナタに金を手渡すシーンがある。その意味が観客には分からない。さらに、先輩が恋人とキスする現場をヒナタがそっとケータイで撮影するシーン。なぜ?

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 映画はがぜんミステリーの色彩を帯び始める。やがて明かされる衝撃的な事実。映画の序盤からあちこちに張り巡らされていた伏線が、するすると回収されていく。その周到な謎の仕掛け方、そして鮮やかな種明かしには、ただ感服するしかない。脚本の勝利である。

 映画は、謎が解けた後も展開を続ける。どのような曲折を経て、いかなるエンディングを迎えるかは、見てのお楽しみ。映画ならではの面白さが詰まった、青春映画の逸品である。吉祥寺でのロケ撮影、野崎美波のピアノによるBGMも素晴らしい。

 主演の桐山漣が、「さよならみどりちゃん」(05)、「私は猫ストーカー」(09)の星野真里と五分に渡り合い、達者な演技を見せている。また、加藤章一監督が、二人の心の繊細な動きを巧みに描き出し、見事な劇場長編映画デビューを飾っている。男優・桐山漣、監督・加藤章一。彼らの今後の活躍に注目したい。

(文・沢宮亘理)

「吉祥寺の朝日奈くん」(2011年、日本)

監督:加藤章一
出演:桐山漣、星野真里、要潤、柄本佑、田村愛

11月19日、吉祥寺バウスシアター、ユーロスペースほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://kichijojiasahina.jp

作品写真:(c)2011 Eiichi Nakata /『吉祥寺の朝日奈くん』製作委員会
posted by 映画の森 at 01:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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