2月4日公開された湯唯(タン・ウェイ)、ヒョンビン主演の「レイトオータム」。2010年10月、第15回釜山国際映画祭での上映に合わせてキム・テヨン監督が舞台あいさつし、観客の質問に答えた。キム・テヨン監督は「慣れない英語の演技。主演の二人は勇気をもって『やります』と言ってくれた」と話した(編集部注:10年10月18日付記事を再掲載します)。
主なやり取りは次の通り。
──まず監督からひとこと、ごあいさつを。
まずは謝らなくてはなりません。皆さん、当然ヒョンビンさんを待っていたと思いますが、私が出てきてしまってすみません。(会場から「いいえ」の声)。(ヒョンビンは)現在撮影の最中で、今日の撮影のために昨夜すぐに帰りました。それで私が一人で来ることになりました。本当にすみません。
韓国社会の物悲しさ 秋の情緒に合わせた
──「レイトオータム」は1966年の故イ・マニ監督の同名映画のリメイクです。しかし、イ・マニ監督のフィルムが現存しないので大変だったのでは。
原作は1966年の作品で、プリントはなく見られません。それで(75年の)キム・ギヨン監督の(リメイク)作品(「肉体の約束」)と、81年のキム・スヨン監督、キム・ヘジャ主演の作品を見ました。一人の女性が模範囚として特別休暇をもらい、何年ぶりかで出所する。一日を過ごす間にある男に出会い、ふたたび刑務所に戻る設定が面白いと思いました。どうシナリオを書こうかと悩むうち、当時の韓国社会が持つ物悲しさのようなものが、秋の情緒にぴったりくると考え、中国人女性と韓国人男性の話にしたらどうなるか、と思い付きました。私は英語もあまりできないので、旅行気分でシアトルに行ったのですが、雰囲気がぴったりだと思いました。
──物悲しい内容なのに、映像がとても美しいですね。
韓国からは美術監督、撮影監督、衣装監督と私の4人で行き、米国のスタッフと合流しました。米国育ちの米国人が撮るのではなく、自分たちで米国の秋の雰囲気を作り出そうと話し、美術監督と撮影監督が協力して、いい雰囲気を出してくれました。もしもそんな雰囲気が感じられたなら、彼らのおかげです。私を俳優との作業に集中できるようにしてくれました。シアトルで一人の女性に起こったことを、実際に霧を作ったりして表現しました。
シアトルで2カ月間 主演二人とじっくり準備
──(客席から俳優のパク・チュンフンが立ち上がり)大変面白く観ました。余白を感じられる映画……退屈と余白の違いですね。本当に余白を感じられる、美しい映画だと思います。セリフが英語だというので少し心配でしたが、ヒョンビンさんはよくやりました。タン・ウェイさんは劇中、笑わないのですが、それはもともとの性格なのか(笑)、監督の指示なのか気になります。
この映画はスローですよね。観客に俳優の演技をゆっくり楽しんでもらえるように作ったのです。ちょっと居眠りしても、目覚めるとまだ同じ場面。楽な気持ちで楽しんでもらえればありがたいです。俳優は自分の感情を隠し、抑制する部分が多いほうがいいと思っていました。英語での演技で、二人は互いに慣れていないのに、二人とも勇気を出して「やる」と言ったので、「シナリオを校正する2カ月間、シアトルに来てくれないか」と提案しました。その間は夕方にリハーサル、昼は二人とも英語の勉強。タン・ウェイはいい女優です。人柄もよく、明るい性格で冗談もよく言い、アクティブです。理解力、表現力にすぐれているので、私が注文をつけたというよりは、自然に演技してくれました。2カ月という十分な時間を持てたからこそ可能だったと思います。
──(観客から)踊りながら空中に上るシーンは、どんな意図で入れたのですか。
シナリオには簡単に「二人は踊る」「空に上る」と書いたのですが、現場でもいろいろな意見がありました。二人が特別な瞬間を共有すれば、距離が近くなるというような単純なものです。ほかに特別な意図はなく、“映画の中の映画”と考えてもらえれば。
──(同)舞台にシアトルを選んだ理由は。
異国の雰囲気で、落葉のイメージがあり、一日中霧が出たり雨が降る感じの、くすんだ陰鬱な場所を探していました。(シアトルは)半年は天気が良く、半年はそうではない。米国で自殺が最も多い土地でしょう。それでシアトルを選びました。
(文・芳賀恵 写真・遠海安)
「レイトオータム(原題:晩秋)」(2010年、韓国・香港・米国)
監督:キム・テヨン
出演:湯唯(タン・ウェイ)、ヒョンビン
第15回釜山国際映画祭ガラ・プレゼンテーション部門招待作品。
2月4日、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://www.sumomo.co.jp/lateautumn/
写真1:舞台あいさつで観客の質問に答えるキム・テヨン監督=釜山市内で10月9日
写真2:「レイトオータム」記者会見で笑顔を見せる(右から)ヒョンビン、タン・ウェイ、キム・テヨン監督=同10月8日
写真3:客席から質問する俳優のパク・チュンフン=同10月9日
作品写真:釜山国際映画祭事務局提供
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