子供同士のけんかに双方の両親が介入。穏便に解決しようと、4人で話し合いを始めるが、和やかなムードも最初だけ。しだいに議論はヒートアップ。やがて本音むき出しの激烈なトークバトルへと発展していく――。
人気劇作家、ヤスミナ・レザのヒット舞台劇を映画化した「おとなのけんか」。ロマン・ポランスキー監督のメガホンのもと、ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレットらハリウッドを代表する演技派4人が火花を散らす、抱腹絶倒の風刺コメディーである。
一緒に遊んでいた少年たちの一人が、別の少年の前歯を折った“事件”が発端だった。加害者側のカウアン夫妻が、被害者側のロングストリート夫妻のもとを訪れ、謝罪や補償について協議しようということに。アラン(クリストフ・ヴァルツ)とナンシー(ケイト・ウィンスレット)のカウアン夫妻。マイケル(ジョン・C・ライリー)とペネロペ(ジョディ・フォスター)のロングストリート夫妻。二組の夫妻は、和解に向けて建設的な話し合いを進めるはずだった。
ところが、いつのまにか議論は本題を外れ、互いの態度、立場、主義などへの悪口が飛び交い始める。さらには、夫と妻の間で日頃の不満が爆発し、派手な夫婦ゲンカも勃発。それぞれの怒りの矛先はくるくる向きを変え、敵対していた夫同士が、共感し合ったり、また毒づき合ったりと、混沌状態の中で、いつ果てるともなくトークバトルは続く。
よく練られたセリフがタイミングよく繰り出され、最初から最後まで笑いが途絶えることはない。ドラマの時間=上映時間という舞台の設定を踏襲しつつ、カット割りという映画の武器を駆使したポランスキーの作劇術は、見事の一言である。
しかし、笑いの中には現代社会のさまざまな問題が内包されており、決して能天気なコメディーではない。それは両夫妻の職業設定にも表れている。カウアン夫妻は、夫が企業の顧客弁護士で、妻は投資ブローカー。裕福な保守系カップルだ。支持政党は共和党だろうか。一方、ロングストリート夫妻は、夫が金物商を営み、妻は書店でアルバイトしながら作家業にも手を染めている、中流のリベラル層。民主党支持で間違いないだろう。
そんな両者のバックグラウンドの違いが、トークバトルをリアルで説得力あるものにしているわけだ。ただし、バトルが過熱するに従い、仮面は外され、むきだしの人間性が顔を出す。そして、時にセリフだけではなく、アクションも加わり、スラップスティック(ドタバタ喜劇)の様相を呈する。
受け持った訴訟問題を優先し、子供の問題から逃げようとするアランに、ストレスを募らせたナンシーが、ペネロペの所有する貴重な画集の上に、嘔吐するシーンは壮観。ケイト・ウィンスレットのリアルな吐きっぷりは必見である。
芸達者な4人の競演が楽しい、ポランスキー久々のコメディー。洒脱なエンディングも素晴らしい。
(文・沢宮亘理)
「おとなのけんか」(2011年、フランス・ドイツ・ポーランド)
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、ジョン・C・ライリー
2月18日、TOHOシネマズ シャンテほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://www.otonanokenka.jp/



