2012年05月29日

基地に揺れる済州島 韓国ドキュメンタリー「JAM DOCU 江汀(カンジョン)」、日本で上映会

ヤン・ドンギュ監督.JPG

 韓国南端の風光明媚な島、済州島。国内最高峰の漢拏山(ハルラ山)が中央にそびえ立ち、周囲をなだらかな海岸線が取り巻く。大勢の観光客で賑わい数多くの映画・ドラマのロケ地にもなっている。この美しい島の南部にある小さな集落、江汀(カンジョン)が基地問題で揺れている。韓国海軍の基地建設で、環境面・安保面から住民や平和活動家が反対運動を繰り広げているのだ。

 この問題を監督8人がオムニバス形式で描いたドキュメンタリー映画「JAM DOCU 江汀」の上映会が今月、京都と東京、札幌の3都市で開かれた。8人のうち唯一の済州島生まれで、現在も島で制作活動を続けるヤン・ドンギュ監督(33)が来日し、島への思いを語った。

 「2005年から基地問題を撮り続けてきたが、一人では限界があった。ほかの監督たちと一緒に作品を作ったことで多くの人に見てもらえる機会ができた」(ヤン監督)。江汀地区は2007年に突然、海軍基地の建設地に決定した。当局は地元の同意を取り付けたと主張するが、実際は海女や高齢者らごく一部の住民を抱き込んだにすぎず、多くの住民にとっては寝耳に水だった。その結果、小さな村は賛成派と反対派に分裂してしまう。

破壊前のクロムビ岩.jpg

 8人の監督たちはそれぞれの視点で、島で何が起きているのかを描き出す。隣り合った商店の主人同士が意見の違いから目も合わせなくなる現実。地元の子どもたちが写真で切り取る建設現場の自然破壊。数百人が逮捕されながらも断食や実力行使で建設を阻止しようとする人々。「何より残念なのは住民の分裂だ。家族間でも意見が対立すれば口もきかなくなる現実に心が痛む」とヤン監督は話す。
 
 済州島には悲惨な歴史がある。1948年の武装蜂起に端を発し、鎮圧の過程で3万人近くの島民が犠牲になった「4・3事件」。国が責任を認めたのは盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時、つい数年前のことだ。「事件のトラウマも癒えないのに、ふたたび島民はつらい思いをしている」(ヤン監督)。悲しい歴史がある点、基地問題に揺れる点で済州島は沖縄と似ている、とヤン監督は言う。「米軍と韓国軍の違いはあるが、韓国の国防の現状を考えれば済州島の基地が米軍の拠点になるのは避けられないだろう。基地問題はその地域だけの問題ではない。東アジア全体で考えていかなくてはいけない」

 江汀では映画完成後の昨年末から本格的な基地建設工事が始まった。今年3月には、当地の自然環境の象徴だった溶岩流の一枚岩「クロムビ岩」が爆破された。反対運動はまだ続いている。ヤン監督は映像の力を信じ、平和への願いをこめて基地問題の一部始終を記録し続けている。

写真1:ヤン・ドンギュ監督=札幌市の上映会で5月14日
写真2:破壊前のクロムビ岩(同監督提供)
posted by 映画の森 at 17:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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