
親しい友人に囲まれ、結婚式を挙げたレオ(チャニング・テイタム)とペイジ(レイチェル・マクアダムス)。幸せな新婚生活も束の間、交通事故でペイジは記憶を失う。出会いから数年が空白となり、夫は彼女にとって見知らぬ人。戸惑うペイジを、切なく見つめるレオ。記憶が戻らないと悟ったレオは、出会いからやり直すことを決心。彼女に恋のアプローチを開始する。しかし、2人の前にペイジの両親や元婚約者が立ちはだかる──。米ニュー・メキシコ州に住むカーペンター夫妻の実話を映画化した。監督はエミー賞17部門で候補となったテレビドラマ「グレイ・ガーデン 追憶の館」のマイケル・スーシー。監督作品2作目だ。
新婚のレオとペイジが、幸せの絶頂で事故に遭う。映画を見て車で帰る途中、標識に従い停止したところ、雪でスリップした大型トラックが追突。ペイジは頭からフロントガラスに突っ込み、車外に放り出されてしまう。病院に緊急搬送された2人だったが、レオは奇跡的に無傷。ペイジは頭部を損傷し、こん睡状態に陥る。目覚めたペイジはレオを担当医と間違える。彼と過ごした4年間の記憶をすべて失っていた。

事故に遭う2人を冒頭に配し、物語は過去にさかのぼる。出会いから結婚、事故後に2人が歩む困難。人生が時系列通りに描かれる。ペイジはレオと出会って以降の4年を覚えていないが、それ以前の出来事は記憶している。両親や姉、学生時代の友人、元婚約者は完全に頭の中にあるが、レオと出会った後に出来た友人・知人は分からない。失われた記憶の中で会った人々に、彼女は強いストレスを感じている。
鍵を握るのはペイジ役のレイチェル・マクアダムスの演技。昨日まで愛していた夫が、事故後に見知らぬ人となる。彼へあからさまな嫌悪感を見せ、「他人」と暮らす生活に神経をすり減らす。記憶を失う前後をマクアダムスが見事に演じ分ける。逆に今もペイジを愛するレオは、彼女の態度に困惑しながら、今まで通りすべてを受け入れ愛そうとする。気持ちがすれ違う2人に、ペイジの両親や元婚約者が入り込み、話はややこしい方向に動き出す。

映画やドラマのような物語だが、実話であることに驚く。部分的な記憶喪失になった妻と、戸惑いつつ彼女を献身的に支える夫。受け身になった夫・レオ役のチャニング・テイタムが抑えた演技でいい。「G.I.ジョー」、「第9軍団のワシ」など、アクション作品で見せるダイナミックな演技以外に、「親愛なるきみへ」などラブストーリーでも繊細な演技をみせている。注目の若手男優だ。ペイジの両親を演じた米アカデミー賞俳優のジェシカ・ラング、「ピアノ・レッスン」のサム・ニールら、ベテラン俳優の存在が、やや平板な展開にスパイスを与えている。
(文・藤枝正稔)
「君への誓い」(2012年、米国)
監督:マイケル・スーシー
出演:レイチェル・マクアダムス、チャニング・テイタム、サム・ニール、スコット・スピードマン、ジェシカ・ラング
6月1日、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://www.kimi-chikai.jp/