“道”を見失った初老の男。眼科医のトム(マーティン・シーン)は、一人息子ダニエルの突然の訃報に途方に暮れる。キリスト教の聖地、スペインのサンディアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の初日、ダニエルは嵐に巻き込まれ、不慮の死を遂げたという。息子は何を思い旅に出たのか。トムは真実を確かめるべく、亡き息子のバックパックを背にサンディアゴ・デ・コンポステーラへ旅立つ──。
俳優のエミリオ・エステベスの監督、脚本4作目。主演は監督の父で「地獄の黙示録」のマーティン・シーン。息子の監督作品へ3度目の出演だ。監督自身がダニエルを演じており、父子共演となった。
訃報を受けたトムは、米カリフォルニアからフランスとスペインの国境の町、サン=ジャンの警察に向かう。息子の遺体、遺品のバックパックと帰国するつもりだったが、3度の巡礼経験を持つセバスチャン警部(チェッキー・カリョ)の言葉に突き動かされ、遺体を火葬し、息子が巡礼用に用意していた装備を身に付け、遺灰と共に聖地への800キロを歩く決意をする。
巡礼は心を解放する旅だ。地元のグルメや酒を堪能し、美しい風景を満喫する。トムも初めは一人きりでスタートすが、途中で知り合った人者同士が自然と集まりグループとなる。トムと巡礼を共にするのは、ダイエット目的のオランダ人ヨスト(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)、禁煙を誓うカナダ人女性サラ(デボラ・カーラ・アンガー)、スランプ中のアイルランド人作家ジャック(ジェームズ・ネスビット)。それぞれ目的は違うが、時にぶつかり合い、尊重しながら聖地を目指す。
トムの巡礼にはトラブルが付きまとう。橋から遺灰の入ったリュックを川に落としたり、酔って騒いで逮捕されたり。そんな父の巡礼に寄り添うように、死んだはずの息子がトムの視線に入ってくる。生前は自分の行動を理解しなかった父が、改めて認めて尊重してくれた。息子が父に感謝しているようだ。
息子が父に巡礼を通し、生きる喜びを教える。演出の意図は違うが、「狼男アメリカン」(81)を思い出した。旅行中に荒野で狼に襲われたバックパッカー2人組のうち、1人が死に、生き残った男が狼男になる。主人公を戒めるように、しばしば朽ち果てた姿で登場する友人。よく似た演出、はっとさせられるギミックに監督のセンスを感じた。
エステベス監督の私情が色濃く出た作品だ。サンティアゴ巡礼は、マーティン・シーンの長年の夢だったという。父の思いをくんだ監督が、映画という形で実現した。最高の親孝行だろう。
(文・藤枝正稔)
「星の旅人たち」(2010年、米・スペイン)
監督:エミリオ・エステベス
出演:マーティン・シーン、エミリオ・エステベス、デボラ・カーラ・アンガー、ヨリック・バン・バーヘニンゲン、ジェームズ・ネスビット、チェッキー・カリョ
6月2日、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかで公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://hoshino-tabibito.com/pc/
作品写真:(C)The Way Productions LLC 2010



