2010年に「シルビアのいる街で」(07)で日本デビュー。斬新なスタイルで映画ファンをうならせた、スペインのホセ・ルイス・ゲリン監督作品が6月30日から特集上映される。処女作「ベルタのモチーフ」(83)から最新作「メカス×ゲリン 往復書簡」(11)まで8本のうち2本を紹介する。
今回最も注目したいのは「ベルタのモチーフ」だ。田園地帯で暮らす思春期の少女の夢想を描く作品。父親の農作業を手伝いながら、単調な日々を送っていたベルタ。都会からやってきた風変わりな男と出会うことで、彼女の内面世界が一変してしまう。男にロマンティックな妄想を抱くベルタの姿は、「シルビアのいる街で」で幻の女性に思いこがれる青年と重なっており、ゲリンの強い作家性を感じさせる。
「工事中」(01)は、バルセロナの再開発プロジェクトによって立ち退きを余儀なくされる人々の生活に焦点を当てたドキュメンタリーだ。いきなり向けられたカメラに向かって、都市論を語る人々。どこまでが記録で、どこからが演出なのか。ドキュメンタリーとフィクションとの境界のあいまいさは、すべてのゲリン作品に共通する特徴だ。売春で生計を立てる女性が恋人の男を背負って歩くシーンは、「シルビアのいる街で」の移動撮影を先取りしたものだろうか。「ベルタのモチーフ」同様、ここにもゲリンの強固な作家性が見て取れる。
特定のモチーフをさまざまに変奏することで、強い作家性を放つゲリンの作品群。「ミツバチのささやき」(73)のビクトル・エリセ監督が、「今のスペインで最もすぐれた映像作家」と評したゲリンの、比類なき映像世界を楽しみたい。
(文・沢宮亘理)
「ホセ・ルイス・ゲリン映画祭」
6月30日、渋谷シアター・イメージフォーラムで4週間限定公開。初日から3日目まで来日したゲリン監督による作品解説あり。上映プログラムなど詳細は公式サイトまで。
http://www.eiganokuni.com/jlg/



