ある金曜日の午後、超心理学科学者チームが、ホワイト家の新居であるアパートメントに来る。チームは精神科医のDr.ヘルザー(マイケル・オキーフ)と、自称“ゲートキーパー”のエレン(フィオナ・グラスコット)、科学技術担当ポール(リック・ゴンザレス)だ。3人はカメラなどさまざまな機材を次々と運び込む。ホワイト家は父親アラン(カイ・レノックス)と、十代の娘ケイトリン(ジーア・マンテーニャ)、4歳の息子ベニー。妻シンシアが死亡した数カ月前から、家族の周りで不可解な現象が起き始めたという。電気が勝手に点滅したり、原因不明の物音が聞こえたり。アランは前の家を引き払い、今のアパートに移り住んだ。ところが引越後しばらくして再び奇妙な出来事が発生。不安にかられたアランは、チームに原因究明を依頼したのだった。
異国の地で拉致され、棺に入れられ生き埋めにされた男の脱出スリラー「リミット」を監督した、スペイン出身のロドリゴ・コルテスが製作、脚本を担当。今回が劇場映画デビューとなるスペインの新人カルレス・トレンスが監督を務めた“フェイク・ドキュメンタリー・ホラー(虚構の事件に基づく記録映画風ホラー)”だ。映像は科学者チームの手持ちカメラ、各部屋に設置した小型カメラによるもので、16種類の映像方式を使い、P.O.V.(ポイント・オブ・ビュー、カメラがとらえた主観映像)で描かれる。
超心理学科学者チームがホワイト家のアパートに到着した。チームは室内のあらゆる場所にカメラや特殊装置を設置する。機材は家庭用ビデオカメラ、暗視赤外線カメラ、超音波発生装置、磁場修正メーターなど。最新技術を駆使し、怪奇現象を科学的に検証しようとする。機材に興味津々のベニーがチームに質問する形で、観客に機材についてさりげなく説明する演出がうまい。設置を終えたチームは早速、天井や壁からのラップ音を聞く。
P.O.V.ホラー作品の走りとなった「パラノーマル・アクティビティ」や、「REC レック」と同系列作品だ。撮影目的や主人公の行動が不自然な「パラノーマル・アクティビティ」に比べると、チームが持ち込んだ特殊機材の映像が物語に説得力をもたせている。依頼主のホワイトはどこか訳ありで、父と娘の関係も極めて悪く、年頃の娘はチームが自分の部屋に出入りすることを拒否する。さらに「母の死は父のせい」と責め立てる。
複雑な家族関係を伏線にしながら、小出しに怪現象を積み重ね、ここぞのシーンで霊体が出現。眠る娘の衣服がめくれ上がるなどの人的被害が出始め、Dr.ヘルザーは「家に暮らす人間に関係したポルターガイスト(心霊)現象だ」と判断。幼いベニーを祖父の家に避難させ、高名な霊媒師に協力を仰ぎ“霊界通信”を試みる。すると娘に異変が起きる。
「パラノーマル・アクティビティ」のヒットを受け、次々製作されたP.O.V.ホラーだが、質は玉石混こうではずれの方が多い。本作は心霊現象を科学的に解明しようとするチームを登場させた点がいい。しかし物語が進むにつれて壁にぶち当たり、霊媒師に頼る心霊映画の王道パターンに。最終的にはポルターガイスト現象=反復性偶発性念力が大爆発。映画的なダイナミズムで締めくくられる。
起承転結がしっかりしたストーリー展開、キャストのリアリティーあふれる演技で、ホラー映画ならではのカタルシスを感じる仕上がりとなった。恐怖演出のさじ加減もバランスがいい。うそ臭さを感じさせない虚構を作り出した、クリエイターのセンスを感じる作品である。
(文・藤枝正稔)
「アパートメント:143」(2011年、スペイン)
監督:カルロス・トレンス
出演:カイ・レノックス、ジーア・マンテーニャ、マイケル・オキーフ、フィオナ・グラスコット、リック・ゴンザレス
11月3日、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://gacchi.jp/movies/143/
作品写真:(C)Nostromo Pictures SL 2011



