2012年12月06日

「ニッポンの、みせものやさん」 消え行く見世物小屋 最後の一座、10年の記録

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 みせものやさんとは、“見世物小屋”のこと。蛇女、人間ポンプ、ロクロ首など、誰でも写真や映像では目にしたことがあるだろう。でも、祭りや縁日で直に見た経験を持つ人は、あまりいないのではないか。室町期に発祥し、江戸期に大衆文化として発達。明治以降には仮設小屋を建てて、各地を巡業するスタイルが確立した。全盛期には300軒を数えたというが、映画やテレビの登場で斜陽となり、50年代末には48軒、90年代には4軒にまで減り、現在残っているのはたった1軒という。見たいと思っても、見る機会さえないのが現状だ。

 本作は、その最後の見世物小屋一座である大寅興行社に密着し、日常生活や歴史を追ったドキュメンタリー。学生時代に新宿・花園神社の興行で一座に出会った奥谷洋一郎監督が、10年にわたる交流をもとに撮り上げた貴重な記録である。インタビュー映像に登場する大野裕子さんは、初代親方・大野寅次郎さんの娘だ。一座の中心的存在で、興行の際には口上を述べて場を盛り上げ、客を招き寄せる。15歳でこの世界に入って父親とともに全国を巡り、仕事を覚えたそうだ。

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 かつては複数の小屋同士が出し物で競い、口上で張り合った。しかし、もうそんな時代は二度と来ない。高齢化した興行師が引退し、後が続かないのだ。新興メディアの台頭もあるが、身体障害者の出演が取り締まられ、出し物が制限されたことも大きい。そのぶん暗さや怖さがなくなり、魅力が薄れた。今後も見世物小屋に追い風が吹くことはないように思える。

 それでも奥谷監督は、見世物小屋の灯を消したくないのだろう。

 「いつの時代も、演芸や興行は形を変えながら生き残っていくのでは?」と問いかける奥谷監督。大野さんは答える。「でもね、私たちがやってきた見世物小屋は確実になくなっていくんだよ」。見世物小屋の盛衰を最前線で目撃してきた大野さんの言葉。説得力がある。

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 だからこそ、映画に収められた見世物の映像には価値がある。特に終戦直後から一座に在籍するお峰太夫の火吹き芸。もしかしたら、もう彼女の芸は見られないかもしれないのだ。消え行く日本の大衆文化、見世物小屋。最後の輝きをしっかり見届けたい。

(文・沢宮亘理)

「ニッポンの、みせものやさん」(2012年、日本)

監督:奥谷洋一郎

12月8日、新宿K’s cinemaで公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.dokutani.com/
タグ:レビュー
posted by 映画の森 at 09:02 | Comment(0) | TrackBack(1) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「ニッポンの、みせものやさん」:絶滅危惧種の記録
Excerpt: 映画『ニッポンの、みせものやさん』は、消え行く見世物小屋の最後の1つとなった大寅
Weblog: 大江戸時夫の東京温度
Tracked: 2013-01-05 23:08
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