
砂漠にたたずむ辺境の宿「龍門」に、60年に一度の巨大砂嵐が迫っていた。言い伝えでは砂漠に眠る財宝と都市が地上に姿を現すという。龍門には絶対的権力を持つ悪の宦官ユー(チェン・クン)率いる武装集団、秘宝強奪をもくろむ盗賊団、謎めいた美しき女侠客リン(ジョウ・シュン)が集結。打倒ユーに執念を燃やす孤高の義士ジャオ(ジェット・リー)も駆けつけ、一触即発の殺気が張りつめる。ついに決戦の火ぶたが切られた時、想像を絶する竜巻が襲来。天が荒れ狂い、大地が揺れる激闘の果て、誰が伝説の秘宝を手にするのか──。
大ヒット作「ワンス・アポン・タイム・イン・チャイナ」シリーズのツイ・ハーク監督とジェット・リーが、14年ぶりに組んだ3Dアクション映画だ。ツイ・ハークが製作・脚本を担当した「ドラゴン・イン」(92)の3年後の後日談となる。

“香港のスピルバーグ”と呼ばれるツイ・ハーク監督らしく、人間が飛ぶ姿を派手なワイヤーアクションで見せる。3D映像を効果的に見せるためデジタルCG(コンピューター・グラフィックス)で作られた剣、矢、樽、丸太が、画面から飛び出してくる。「見る」ことに「体感」を加えたアトラクションだ。初の3D武侠映画とあって、ハリウッドから「アバター」のスタッフを招いたという。
権力者による弾圧や不正が横行する明代の中国。皇帝の子を身ごもり、都を脱出した官女スーを女侠客リンが救い、砂漠に建つ「龍門」にたどり着く。宿には300年前に砂に埋まった財宝を狙い、王女チャン、女剣客グー、情報屋フォンと盗賊団が集まっていた。そこへリンと恋仲だったジャオ、ジャオの宿敵ユーも集結。居合わせた人々が敵と味方に分かれ、全面戦争が繰り広げられる。


奥行き方向にポイントを置くハリウッド作品と異なり、物体が前に飛び出すシーンが多い。勧善懲悪の世界観をもとに、カンフー&ワイヤーを駆使。飛翔アクションを派手に見せ、中盤は宿を舞台に集団抗争劇が展開。後半は秘宝探しのアドベンチャーへ変貌する。クライマックスはCGで作られた竜巻の中のバトル。前代未聞の特撮アクションとなる。
しかし、多くの要素を詰め込んで大風呂敷を広げたのはいいが、収拾がつかなくなり、幕引きは強引で投げやりになってしまった。とはいえ3Dエンターテインメント武侠映画として、大いに楽しめる作品だ。
(文・藤枝正稔)
「ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝」(2011年、中国)
監督・製作・脚本:ツイ・ハーク
出演:ジェット・リー、ジョウ・シュン、チェン・クン、リー・ユーチュン、グイ・ルンメイ、メイビス・ファン、リュー・チャーフィー
1月11日、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://dragongate-movie.jp/
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