天才寿司職人の娘で修行中のケイコ(武田梨奈)は、家を出て温泉旅館で働くことになった。ある日、宿泊していた製薬会社社長・小松(手塚とおる)を恨む男が出現。宴会の寿司を殺人生物の“デッド寿司”へ変えていく。牙をむいて襲ってくるデッド寿司の大群に、ケイコは父に叩き込まれたカンフーで立ち向かう──。
「片腕マシンガール」、「電人ザボーガー」など、マニアックで独創的な作品を発信する井口昇監督の最新作「デッド寿司」。死んだ生物を蘇生させる薬を使い、寿司のマグロ、えび、いくら、サーモンが“生き返って”凶暴化。人を襲う奇想天外なパニック・コメディーだ。カンフー、スプラッター・ホラー、エロスなど、さまざまな要素がごった煮で観客に襲いかかる。
主演の武田梨奈ありきの作品だ。ケイコが父に叩き込まれたのは、なぜか寿司を握る動きにカンフーを取り入れた摩訶(まか)不思議な方法。武田の身体能力を生かす強引な設定である。10歳で空手道場に入門し、少林流空手道月心会黒帯保持者。空手アクション「ハイキック・ガール」(08)で本格映画デビューした武田が、コメディー初挑戦。ヌンチャク・アクションを披露する。
物語はいたってシンプルだ。製薬会社の山田(島津健太郎)が開発した蘇生薬に、蘇った生物が凶暴化する副作用が見つかる。小松社長は薬の存在を隠ぺいするため、山田を犯罪者に仕立てて刑務所送りに。出所した山田は復讐へ向かい、会社の宴会で蘇生薬を使用。デッド寿司で社長や社員を殺そうとする。旅館では居合わせた従業員も巻き込まれ、サバイバル・ゲームが繰り広げられる。
食べ物が人を襲う映画といえば、トマトが人を襲う米映画「アタック・オブ・ザ・キラートマト」(78)がある。今回は「襲われた寿司も感染、凶暴化する」ゾンビ映画のルールを受け継いでいる。しかも襲われた人間まで凶暴になり、人を襲っている。「ゾンビ」、「グレムリン」、「ピラニア」などのホラー的なノリに、カンフーと笑いを投入。ハイテンションな世界を作り上げた。そんな中で唯一、ケイコを助けるアイドル寿司「玉子ちゃん」が、「グレムリン」のアイドル“ギズモ”のような存在になる。
手を抜かない俳優の熱演も見どころ。井口作品常連の島津健太郎のほか、仁科貴、亜紗美、津田寛治、松崎しげる、手塚とおる、須賀貴匡らが、ギャグのようなドラマの中、自分の役割を理解した怪演で盛り上げる。特に歌手の松崎しげるは、声を生かした必殺技をクライマックスに炸裂させる。
摩訶不思議な井口監督の世界に泳がされた武田は、笑いとアクションを両立させて泳ぎ切り、井口作品の毒気を中和した。B級カルト監督と新人アクション女優、見事なコラボレーションをご堪能あれ。
(文・藤枝正稔)
「デッド寿司」(2012年、日本)
監督:井口昇
出演:武田梨奈、松崎しげる、須賀貴匡、仁科貴、亜紗美、村田唯、ジジ・ブゥ、島津健太郎、手塚とおる、津田寛治
1月19日、新宿武蔵野館ほかでレイトショー。作品の詳細は公式サイトまで。
http://deadsushi.com/
作品写真:(C)オフィスウォーカー
タグ:レビュー



