2013年03月09日

「セデック・バレ」 ウェイ・ダーション監督×ダーチン来日会見 台湾の大規模抗日蜂起・霧社事件を映画化 「異なる価値観を認め、真摯に向き合った時、互いを理解できる」

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 日本統治下の台湾で起きた大規模武装蜂起「霧社事件」を描いた台湾映画「セデック・バレ」のウェイ・ダーション(魏徳聖)監督と俳優のダーチン(大慶)が3月5日、東京都内で記者会見した。ウェイ監督は「さまざまな民族が集まった台湾には、“虹色の価値観”がある。異なる価値観を認め、真摯に向き合った時、互いを理解できる」と語った。

 「セデック・バレ」は2部構成、計4時間36分の大作。大ヒット作「海角七号 君想う、国境の南」(2008)のウェイ監督が構想に十数年、製作費約20億円を費やし完成させた。製作はジョン・ウー(呉宇森)監督。日本から安藤政信、木村祐一らのほか、ビビアン・スーらも出演。蜂起の中心となった台湾原住民セデック族の文化や家族愛、葛藤を通し、民族の誇りと命の尊厳を問う物語だ。

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 会見の主なやり取りは以下の通り。

「当時の背景や制度、膨大な資料で調べた」

 ──日本公開を控えた今の気持ちは。

 ウェイ監督:私の語りたいこと、視点が受け入れてもらえればうれしい。

 ダーチン:いろいろな面で挑戦した。日本の人たちにも気に入ってもらえれば。応援して下さい。

 ──霧社事件について知った時、何を感じたか。

 ウェイ監督:台湾では小中学校の教科書に載っているが、説明は2〜3行程度。たまたまテレビで台湾原住民のニュースを見て、霧社事件を描いた漫画を読んだ。その後、当時の背景や制度を膨大な資料を通して調べた。

 ──歴史にかかわる作品に出演した感想は。

 ダーチン:僕は(台湾原住民の)タイヤル族出身。霧社事件のことはまったく知らなかった。(出演が決まり)一族の年配の人たちに会い、民族独自の文化や信仰について聞いた。先祖の豊かな知恵や、家族や土地を侵入者から守ってきた方法を知った。撮影には使命感をもって臨んだ。

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「存在や信仰の否定、力による文化の強制はだめ」

 ──日本人の俳優、スタッフとの仕事はどうだったか。

 ウェイ監督:台湾側のキャストは原住民の素人を、日本側はプロの俳優を使おうと決めていた。日本人の役は感情の変化をきちんと表現しなければならない。演技のプロで、いわゆる“スター”を起用しようと思った。

 (美術を担当した)種田陽平さんは心も視野も広い人。台湾の映画産業は過去20年間低迷したため、美術面でもブランクがあった。今回は台湾原住民、漢民族、日本人の三つの要素を兼ね備えたセットがほしかった。種田さんはこちらの思いに応え、「『台湾の中にある日本人の町』を作ろう」と言ってくれた。

 ──作品に出てくる「文明」と「野蛮」の概念についてどう考えるか。

 ウェイ監督:一般に文化の力が強いことが「文明的」で、弱いことが「野蛮」だとされ、世の中には文化の強弱が存在する。強い文化に対峙した時、どう衝突を避け、乗り越えるか。力で文化を強制してはならない。

 たとえば私の服が時代遅れで、かっこ悪ければ批判しても構わない。しかし、私の存在や信仰を否定してはだめだ。他者の価値観や信仰を否定した時、衝突が起きるのではないか。絶対的に良い文化などない。異なる価値観を認め、真摯に向き合った時、互いを理解できるのではないか。

「ビビアンはノーギャラ。現場でも和気あいあい」

 ──安藤政信、ビビアン・スーの印象は。

 ビビアンはタイヤル族出身。出演を即答で快諾してくれた。出演料はゼロだったうえ、製作資金の一部まで出してくれた。現場でもスター然とせず、スタッフとおしゃべりしたり、食事を一緒にしたり、和気あいあいとしていた。

 安藤さんとは役柄について時間をかけ、きちんと話し合った。出演が決まったら後は全力投球。セデック族出身で日本に留学している学生を探し、言葉や文化を3カ月かけて学んでくれた。台湾に来た時もマネージャーなしでたった1人。撮影がない時はあちこち歩き回り、写真を撮ったり、おいしい茶葉を買ったりしていた。私からみると不思議な日本人だった(笑)。

「台湾には“虹色の価値観”がある。政治・経済的理由で壊さないで」

 ──台湾には(戦後大陸から渡ってきた国民党系の)外省人、(戦前から台湾に住んでいた福建系の)本省人、原住民とさまざまな人々がいて、価値観も多様だ。作品にはそんな現状に関連したメッセージを込めたのか。

 もちろんだ。台湾は最も“混乱した価値観”がある場所だと思う。多様な価値観を大事にしつつ、さまざまな民族が暮らしている。台湾の人々は過去100年、体制が変わるごとに新たな秩序を見出してきた。私は前向きに、より良き方向へ、ロマンをもって物事を考えたい。

 今の台湾には“虹色の価値観”がある。それぞれのグループが個性やカラーを持ち、台湾独自の価値観を形作っている。台湾の価値観が政治や経済的理由で破壊されたり、影響されることは避けてほしい。

(文・遠海安)

「セデック・バレ」(2011年、台湾)

第1部「太陽旗」(144分) 第2部「虹の橋」(132分)

監督:ウェイ・ダーション
出演:リン・チンタイ(林慶台)、ダーチン(大慶)、安藤政信、マー・ジーシアン(馬志翔)、ビビアン・スー(徐若瑄)、木村祐一、ルオ・メイリン(羅美玲)、ランディ・ウェン(温嵐)

4月20日、渋谷ユーロスペース、吉祥寺バウスシアターほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.u-picc.com/seediqbale/

編集部注:台湾では先住民族の呼称として「原住民」を使用している。中国語で「先住民」と表記した場合、「すでに滅んだ民族」の意味になるため。台湾憲法も「原住民」と規定している。
posted by 映画の森 at 16:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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