
2004年12月、死者・行方不明者22万人以上を出したインドネシア・スマトラ沖地震。滞在先のタイ・プーケット島で津波にのまれ、一度は離れ離れになりながら、奇跡の再会を果たした家族の実話を描く。
クリスマス休暇を過ごすため、妻のマリア(ナオミ・ワッツ)、3人の息子たちと島を訪れた英国人ビジネスマン、ヘンリー(ユアン・マクレガー)。青く広がる海を前に、静かなリゾートホテルで、ゆったり流れる時間を楽しんでいた。
ところが突然突風が吹き荒れ、大地が揺れ、無数の鳥が飛び立つ。水平線の彼方から押し寄せた大津波は一瞬で浜の椰子をなぎ倒し、ホテルを飲み込む。ヘンリーら家族5人も波にのまれ、散り散りになっていた。

濁流に流される中、マリアはなんとか長男ルーカス(トム・ホランド)を見つけ、住民に助けられる。胸と足の大けがを負い、泥だらけのまま病院へ。体が衰弱し、意識も薄れ行く中、マリアはルーカスに告げる。「誰かのために役立つことをしなさい。あなたは人助けが得意でしょう」。ルーカスは勇気を奮い起こして院内を走り、家族を探す人々の手助けをする。
一方、ヘンリーと二人の弟たち(サミュエル・ジョスリン、オークリー・ペンダーガスト)も一命をとりとめ、マリアとルーカスを探していた。疲れた体を引きずり、病院や避難所を回るヘンリー。「もうどうすればいいか分からない」。泣き崩れるヘンリーに、周りの人々が手を差し伸べる──。

「インポッシブル」は、津波の恐怖を描こうとしたわけではない。想像を絶する困難に見舞われても、希望を失わず、前に進む家族の勇気を描く。人は絶望に陥っても、なお誰かを助けることができる。全編を貫くのは、人間の可能性と善意への信頼だ。
「人々の体験を尊重し、信憑性のあるものにし、感じたことを誠実に伝える責任があった」とワッツ。「津波がただの背景だったら、きっと動揺した。僕は津波の衝撃を受けた人々全員に責任を感じた」とマクレガー。出演者の的確で抑制の効いた演技が、作品に誠意を与えている。
(文・遠海安)
「インポッシブル」(2012年、スペイン)
監督:J・A・バヨナ
出演:ナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガー、トム・ホランド、サミュエル・ジョスリン、オークリー・ペンダーガスト、ジェラルディン・チャプリン
2013年6月14日、TOHOシネマズ シャンテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://gacchi.jp/movies/impossible/
作品写真:(C)2012 Telecinco Cinema, S.A.U. and Apaches Entertainment, S.L.
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