台湾、香港で爆発的にヒットした台湾の青春映画「あの頃、君を追いかけた」。監督・脚本は台湾の人気作家、ギデンズ・コー(九把刀)。原作は監督自身の体験をもとにした同名小説で、1994年から2005年の約10年間、恋に進路に悩む男女の青春を描いている。
主演のクー・チェンドン(柯震東)はデビューとなった同作で一気に注目を集め、映画にCM引っ張りだこの“シンデレラ・ボーイ”になった。ヒロインをやはり同作で人気となったミシェル・チェン(陳妍希)が演じている。
舞台は台湾中西部の地方都市・彰化。同じ高校に通う男女7人が主人公だ。柯震東演じるコートンは、平々凡々で気楽な男子。「下ネタに始まり、下ネタに終わる」毎日で、仲間とつるんで馬鹿ばかりしている。逆に陳妍希演じるチアイーは才色兼備の優等生。コートンたち男子の憧れの的でもある。顔を合わせればけんかばかり、水と油だったはずのコートンとチアイーが、ひょんなことから近付いて交際に発展。それぞれ大学へ進み、離れ離れに暮らす中で、さまざまな出来事に遭遇する──。
ごく普通の青春映画にもかかわらず、大ヒットした要因は「観た人それぞれの“あの頃”を思い出させたため」と言われている。教室での馬鹿騒ぎ、遠距離恋愛でのささいな口論、好きなのにうまく伝わらない思い。制服や教科書、試験にけんか、仲間7人で遊んだ海辺。次から次へと“甘酸っぱい青春アイテム”が登場し、これでもかと観客のノスタルジーを突いてくる。
中でも印象的なのは、コートンの人物造形だ。コートンはなぜか家で全裸で暮らしている。机に向かう時も裸、ご飯を食べる時も裸。父親も全裸でうろうろする不思議な家庭で、夕飯の食卓に座った裸の父と息子に、母が平然とご飯をよそう。「全裸で過ごす」設定は、クー自身が思いついたというが、絶妙なアイデア。
そう、クーの魅力はほどのよい「二枚目半」ぶりなのである。ハンサムといえなくもないけれど、絶世の美男子ではない。どこにでもいそうな男の子。背はそこそこ高くて、要領もそれなりにいい。好きな子に励まされたら、頑張ってまずまずの成績が取れる。くだらないことばかりやっているが、本当のダメ男ではない。だから憧れの彼女にも振り向いてもらえる。
ヒロインのチェンがまたぴったり。台湾での彼女の通称は“オタクの女神”。何でも許し受け入れてくれる、男にとっては夢の存在なのだ。優等生なのに教科書をうっかり忘れるなど、隙のある描写も外さない。オタクにも手が届きそうな、憧れの女神として描かれる。
山あり谷ありの交際を経た二人が、10年後に久しぶりの再会。そこであっとびっくりの展開を経て、美しいエンディングが用意される。青春映画のお手本のような締めくくりだ。
監督は言う。「一番のポイントはヒロイン。とにかく僕が気に入った女性でないと、この映画に『命が宿らない』と思った」。誰もが懐かしく、少しほろ苦く思い出す「あの頃」。監督自身の憧憬が、絶妙な主演俳優2人を得て、青春映画の佳作に生まれ変わった。国や場所を問わず、「あの頃」の記憶は少しだけ美化されて、それぞれの心を温めるのかもしれない。
(文・遠海安)
「あの頃、君を追いかけた」(2011年、台湾)
監督:ギデンズ・コー(九把刀)
主演:クー・チェンドン(柯震東)、ミシェル・チェン(陳妍希)
2013年9月14日、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://u-picc.com/anokoro/
作品写真:(c)Sony Music Entertainment Taiwan Ltd.
タグ:レビュー



