「私の奴隷になりなさい」(12)に続く、壇蜜の主演第2作「甘い蜜」。監督はエロスと暴力が絡み合う濃密な男女関係を描き、独自の作品世界を構築してきた石井隆。今をときめく壇蜜が監督の演出に体当たりで応え、迫真の演技を見せている。
32歳の奈緒子(壇蜜)は、レディースクリニックに勤務する不妊治療の専門医だ。だがそれはあくまで表の顔。会員制SMクラブのM嬢“セリカ”という裏の顔があった。
15年前。17歳の女子高生だった奈緒子(間宮夕貴)は、隣家の男に拉致監禁され、陵辱の限りを尽くされる。監禁1カ月目。すきを突いて逃げ出した奈緒子は、血まみれのバスローブ姿で自宅に帰る。ところが、迎える母親(中島ひろ子)の顔に娘の無事を喜ぶ表情はなかった。まるで化け物を見るかのような冷たいまなざし。幸せだった家庭はあっけなく崩壊した――。
奈緒子はなぜSMクラブで働くようになったのか。何を求めてサディストたちの相手をしているのか。15年前の事件が関係しているのか。奈緒子自身にも答えが見つけられずにいる。映画は医師とM嬢を掛け持ちする現在の奈緒子と、監禁されていた15年前の奈緒子を交互に映しながら、その謎に迫っていく。
事態が急展開を始めるのは、奈緒子が醍醐(竹中直人)を接客した時だ。醍醐の命令で奈緒子は店のオーナーで女王役の木下(屋敷紘子)と役割を交代。強いられて鞭をふるううちに、奈緒子は自分でも気づかなかったサディスティックな快感に目覚めていく。
石井監督が「このシーンをきっかけに彼女は変わった」と語るように、壇蜜の表情がにわかに狂気を帯び始め、ことのほか迫力がある。しかしここはまだクライマックスへの入口に過ぎない。
真性のサディストだという神山(伊藤洋三郎)とのプレイの最中、その瞬間はやってくる――。32歳の奈緒子が17歳の奈緒子へと回帰する衝撃のラスト。壇蜜の取りつかれたような演技が尋常ではない。
(文・沢宮亘理)
「甘い鞭」(2013年、日本)
監督:石井隆
出演:壇蜜、間宮夕貴、中野剛、屋敷紘子、中島ひろ子、竹中直人
9月21日、丸の内TOEIほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://www.amai-muchi.jp/index.html
作品写真:(c)2013『甘い鞭』製作委員会
タグ:レビュー



