2013年12月05日

「ブランカニエベス」 白雪姫を闘牛士に 白黒サイレントで蘇る スペインが描く大人の寓話

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 1920年代、スペイン南部。国一番の人気を誇る闘牛士アントニオ(ダニエル・ヒメネス・カチョ)は、牛と格闘中に角で刺される。身重の妻はショックで出産。アントニオは全身に麻痺が残り、妻は娘の命と引き換えに亡くなる。

 傷心のアントニオは娘カルメンシータを置き去りにし、意地悪なエンカルナ(マリベル・ベルドゥ)と再婚。天才闘牛士の血をひいた娘は祖母に引き取られ、美しい少女(マカレナ・ガルシア)に成長する。しかし、祖母の死で父親と継母の元へ──。

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 パブロ・ベルヘル原案、脚本、監督のスペイン映画「ブランカニエベス」は、グリム童話「白雪姫」をベースに、主人公を闘牛士に置き換えたダーク・ファンタジー。デジタル時代にあえて逆行するように、20年代に合わせて画面サイズはスタンダード(1.33:1)、モノクロ、台詞のないサイレントだ。

 スクリーンを覆った幕が開き、映画が始まる。「スーパーマン」(78)と同じ手法で、ノスタルジックな印象だ。演出もサイレント映画そのもの。台詞がないため俳優は大げさな表情、動きで感情を伝える。そこへアルフォンゾ・デ・ヴィラロンガの雄弁な音楽が寄り添う。

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 「ブランカニエベス」はスペイン語で白雪姫。スペイン文化を代表する闘牛で始まり、両親の悲劇を経て主人公が生まれる。再婚で豪邸暮らしを手に入れた継母は、夫を開かずの間に閉じ込め、贅沢三昧の日々。カルメンシータも虐げられるが、父から闘牛の知識を伝授される。

 後半は小人、毒りんご、ガラスの棺おけなど、白雪姫でおなじみのアイテムが登場。監督はグリム童話の世界を広げ、ダークな味を加え、極上の大人の寓話に仕上げている。意欲的な作品だ。

(文・藤枝正稔)

「ブランカニエベス」(2012年、スペイン・フランス)

監督:パブロ・ベルヘル
出演:マリベル・ベルドゥ、ダニエル・ヒメネス・カチョ、アンヘラ・モリーナ、マカレナ・ガルシア、ソフィア・オリア

2013年12月7日、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://blancanieves-espacesarou.com/

作品写真:(C)2011 Arcadia Motion Pictures SL, Nix Films AIE, Sisifo Films AIE, The Kraken Films AIE, Noodles Production, Arte France Cinema

posted by 映画の森 at 09:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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