2014年02月07日

「光にふれる」 盲目の音楽青年とダンサーの卵 音と光で広がる世界 台湾発青春映画の佳作

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 盲目の青年ピアニストとダンサーを夢見る少女の交流を描いた「光にふれる」。実在の台湾人ピアニスト、ホアン・ユィシアン(黄裕翔)が、自身の半生を自ら演じた青春映画だ。

 生まれつき目が見えないユィシアン。台湾中部・台中の田舎町で、花き栽培に携わる両親、幼い妹と暮らしていた。小さいころから耳がよく、ピアノの才能も抜群。台北の音楽大学進学が決まり、一人暮らしを始めることが決まった。

 一方、台北ではシャオジエ(サンドリーナ・ピンナ)が、バイトをしながらダンサーへの夢を膨らませていた。しかし、母からは反対され、恋人ともうまくいかない。いつしか踊りからも離れるようになってしまう。何もかもうまくいかず、不安につぶされそうな毎日だった。

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 大学の寮に入ったユィシアンは、ルームメイトら仲間たちに支えられ、新生活をスタートさせる。サークル活動も始め、人間関係も徐々に広がっていく。そんなある日。車の多い交差点を渡っていたユィシアンを、通りかかったシャオジエが助ける。

 目の見えないユィシアンに「車は怖くない?」と聞くシャオジエ。「それでも自分を試したい」と答えるユィシアン。逆に「実現できない夢はある?」と問い返すと、シャオジエは思わず「ダンスがしたい。踊っている時は、生きている実感がある」と打ち明ける。

 まったく共通点のなかった二人。その日を境に徐々に距離を縮めていく。音楽とダンス。目指す先は違っても、思い描く夢は同じだ。二人は自分と向き合い、未来へ新たな一歩を踏み出す──。

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 監督は今回が初長編のチャン・ロンジー(張栄吉)。本作のもとになった短編がウォン・カーウァイ(王家衛)監督の目に止まり、企画がスタートした。ユィシアンはプロのピアニスト。来日コンサートも開くなど幅広く活動している。

 ユィシアンの母にベテラン女優リー・リエ(李烈)、ダンス講師役で台湾を代表するダンサーの一人、ファンイー・シュウ(許芳宜)が出演。シャオジエ役のピンナは4カ月のダンス・レッスンを受けて撮影に臨んだという。

 若い二人が困難を乗り越え、芸術の夢へ歩き出す。ピアノの音色とダンスの躍動感が、若さをそのまま体現している。台湾の美しい風景、みずみずしい映像も手伝い、後味爽やかで心洗われる。台北映画祭、釜山国際映画祭などで観客賞を受賞した。
 
(文・遠海安)

「光にふれる」(2012年、台湾・香港・中国)

監督:チャン・ロンジー(張栄吉)
出演:ホアン・ユィシアン(黄裕翔)、サンドリーナ・ピンナ(張榕容)、リー・リエ(李烈)、ファンイー・シュウ(許芳宜)

2014年2月8日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://hikari-fureru.jp/

作品写真:(C)2012 Block 2 Pictures Inc. All rights reserved.

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posted by 映画の森 at 09:12 | Comment(0) | TrackBack(2) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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『光にふれる』
Excerpt: □作品オフィシャルサイト 「光にふれる」□監督 チャン・ロンジー□脚本 リー・ニエンシウ□キャスト ホアン・ユィシアン、サンドリーナ・ピンナ、リー・リエユィ、ファンイー・シュウ■鑑賞日 2月8..
Weblog: 京の昼寝〜♪
Tracked: 2014-02-15 08:03

「光にふれる(台湾映画)」本当に触れた感触が伝わる
Excerpt: 「光にふれる(台湾映画)」★★★☆ サンドリーナ・ピンナ、ホアン・ユィシアン、 リー・リエ出演 チャン・ロンジー監督、 110分 北京語 Color | 2012年 台湾=香港 |  (原題/原作:..
Weblog: soramove
Tracked: 2014-02-15 11:08
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