2014年04月29日

「とらわれて夏」 脱走犯と孤独な母子 ライトマン監督、成熟のメロドラマ

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 米東部の静かな田舎町。13歳の少年ヘンリー(ガトリン・グリフィス)は、心に傷を負って引きこもる母アデル(ケイト・ウィンスレット)と暮らしている。離婚で別に暮らす父から同居を求められるが、ヘンリーは母を守るため断っていた。ある日、脱走犯のフランク(ジョシュ・ブローリン)が家に押し入り、母子を拘束する。共に時間を過ごすうち、アデルとフランクはひかれあい、男女の関係になる──。

 ジョナス・メイナードのベストセラー小説を「JUNO ジュノ」(07)、「マイレージ・マイライフ」(09)のジェイソン・ライトマンが監督した。

 時代設定は1987年。劇中「未知との遭遇」(77)がテレビで流れ、ヘンリーの部屋には「E.T.」(82)のポスターが張られている。町の映画館でかかっているのは「ダリル」(85)だ。77年生まれのライトマン監督。主人公に少年時代の自分を反映させたようだ。

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 ポイントは物語がヘンリーの視点で描かれること。同じ物語をアデルの視点で描けば重い恋愛作品となるが、官能描写はぼやかされ、少年の性への目覚めを含む成長物語となっている。

 母子の生活に入り込んだフランクは、野球や車のタイヤ交換をヘンリーに教え、家を修理する。フランクにヘンリーは父親への愛を求める。濃密な5日間を過ごした母子は、フランクと人生を歩む決意をする。

 一方、フランクの過去は随所にフラッシュバックで挿入される。母子には危害を加えず、武骨な男料理をふるまうヘンリー。隣人からもらった桃でピーチパイ作る。フランクとアデルの手は、ボールの中でねっとりした桃をこねながら重なり合う。「ゴースト ニューヨークの幻」(90)で、回るろくろの表面で男女の手が絡み合うシーンを彷彿とさせる。男女の性を暗喩したうまい演出だ。ピーチパイは過去と現在をつなぐ大事なアイテムとなる。

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 張りつめた中で育まれる大人の恋愛と、少年の成長の物語。コメディーが得意なライトマン監督、成熟を感じる大人のメロドラマに仕上がった。

(文・藤枝正稔)

「とらわれて夏」(2013年、米国)

監督:ジェイソン・ライトマン
出演:ケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブローリン、ガトリン・グリフィス、トビー・マグワイア、トム・リピンスキー

2014年5月1日(木)、TOHOシネマズ シャンテほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.torawarete.jp/

作品写真:(C)MMXIII Paramount Pictures Corporation and Frank's Pie Company LLC. All rights Reserved.

posted by 映画の森 at 08:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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