
1996〜98年に連載された日本の漫画「ルーズ戦記 オールド・ボーイ」を、「マルコムX」(92)のスパイク・リー監督が映画化した。パク・チャヌク監督の同名作品(03、カンヌ国際映画祭グランプリ)をリメークしたのではなく、あくまでハリウッドのオリジナル版。舞台を米国の架空都市に移し、ミステリーと復讐劇を融合させている。
98年10月8日、ジョー・デュセット(ジョシュ・ブローリン)は、泥酔して夜の中華街をさまよい、黄色い傘の女と出会った後、記憶が途切れる。目覚めた場所は安ホテルのような監禁部屋。部屋の鉄扉にドアノブはなく、十字架と聖書が置かれ、小窓から質素な食事が出される。メニューは健康補助食品やカップラーメン、夕食は餃子がメーンのデリバリー中華。単調な日々が続く。

部屋のテレビはニュース、エクササイズ、格闘技番組、アクション映画ばかり流していた。ある日、ジョーはテレビを通じ、自分が妻を殺し、逃亡したと伝えられていることを知る。養子に出された幼い娘ミナを、テレビ番組で見ては愛を深めていく。監禁開始から20年後。ジョーは突然解放される。復讐劇の幕開けだ。自分を陥れた男をなんとしても探し出し、ミナに再会したい──。
なにかと理由付けが必要な米国の観客に向け、ハリウッド版はジョーの行動に細かい前提を加えている。冒頭、泥酔して登場するシーンには、「商談に失敗してやけ酒をあおった」経緯を補足。物語の道案内人的存在として“黄色い傘の女”を新たに追加した。さまざまな偶然が積み重なった韓国版に対し、ハリウッド版は真犯人が仕掛けた罠=必然性を強調している。

韓国版で印象的だったトンカチ一つで戦うシーン。大勢のやくざを相手に、男が孤軍奮闘する様子は、同じワンカットの長回しで撮影されている。一方、犯人の年齢やラストもつじつまが合うよう変更された。
荒削りの韓国版、口当たりのいいハリウッド版といおうか。後発は苦戦を強いられるだろうが、リー監督の手腕は健在だ。主人公の内面を掘り下げ、暴力演出も光っている。ブローリンの演技も研ぎ澄まされ、極上の復讐劇に仕上がったといえよう。
(文・藤枝正稔)
「オールド・ボーイ」(2013年、米国)
監督:スパイク・リー
出演:ジョシュ・ブローリン、エリザベス・オルセン、シャルト・コプリー、サミュエル・L・ジャクソン、
マイケル・インペリオリ
2014年6月28日(土)、新宿バルト9ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://www.oldboymovie.jp/
作品写真:(C)2013 OB PRODUCTIONS,INC. ALL RIGHTS RESERVED.