2014年06月30日

「マダム・イン・ニューヨーク」 インドの主婦、異国で目覚める 自立と成長の物語

miny_main_large.jpg

 インドの新人女性監督、ガウリ・シンデーの長編デビュー作「マダム・イン・ニューヨーク」。派手なアクション、歌やダンスが印象的なインド映画に対する固定観念を覆し、主婦の自立と成長を描いた温かいドラマだ。

 主人公のシャシには1970〜90年代に活躍し、「インド映画史100年国民投票」女優部門1位を獲得したシュリデヴィ。97年の結婚を機に引退状態だったが、15年ぶりにカムバックした。夫のサディシュには「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」(12)のアディル・フセイン。飛行機でシャシと隣り合わせた乗客役で、国民投票男優部門1位に輝いた大スター、アミターブ・バッチャンが特別出演している。

 インドの主婦シャシ(シュリデヴィ)は英語が話せず、家族から馬鹿にされてコンプレックスを抱えていた。ところが姪の結婚式を手伝うため、家族を残して一人ニューヨークへ行くことになる。不安いっぱいで飛行機に乗り込んだが、隣席の優しい乗客(バッチャン)の助けで楽しく過ごす。

miny_sub1_large.jpg

 しかし、到着したニューヨークでは異国での洗礼を受ける。立ち寄ったカフェで英語が通じず、高圧的で意地悪な女性店員にいじめられ、シャシは買った品物を置いて店から逃げ出してしまう。落ち込んだシャシの目に飛び込んだのは、英会話学校の広告「4週間で英語が話せる」だった──。

 平凡な主婦が異国で自我を確立し、覚醒していく。どこまでも温かい作品だ。ニューヨークで孤独だったシャシは、英会話学校で自分と同じように異国から来た仲間たちと出会う。多民族が暮らす街でシャシは居場所を見つけ、仲間と英語を学ぶうち、女性としてのプライドと自信を取り戻す。

miny_sub2_large.jpg

 妻であり母であるシャシは、ニューヨークでさまざまな体験をする。フランス人のクラスメートとの淡いロマンスも経験。家族に尽くすばかりだったシャシが、大人の女性として一皮むける。姪の結婚式で披露される感動的なスピーチ。言葉の壁を乗り越え、目覚めた姿がそこに凝縮している。

 インド菓子の“ラドゥ”を小道具として効果的に使いながら、インド映画恒例のダンスで締めくくる。初メガホンと思えぬバランス感覚で、主人公の揺れ動く内面を丁寧に描き出した監督。シュリデヴィの繊細な演技と、監督が「実母をイメージして」書いた脚本が相まり、母への思いがこもる珠玉の1本となった。

(文・藤枝正稔)

「マダム・イン・ニューヨーク」(2012年、インド)

監督:ガウリ・シンデー
出演:シュリデヴィ、アディル・フセイン、アミターブ・バッチャン、メーディ・ネブー、プリヤ・アーナンド

2014年6月28日(土)、シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://madame.ayapro.ne.jp/

作品写真:(C)Eros International Ltd
posted by 映画の森 at 09:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | イラン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック