中国の精神病院に密着したドキュメンタリー映画「収容病棟」(ワン・ビン=王兵監督)の公開に合わせ、ドキュメンタリー作家の原一男監督がこのほど、東京・渋谷で開かれたトークイベントに参加した。原監督は「ワン・ビンが描いたのは、私たちが生きる世界の写し絵だ」と語った。
天皇の戦争責任を追及する過激なアナーキスト・奥崎謙三を追ったドキュメンタリー「ゆきゆきて、神軍」(87)で世界に衝撃を与えた原監督。「収容病棟」について「中国という国家が収容病棟のようともいえる。権力に抑圧された空間はどの国にもある。だから『収容病棟』は、私たちが現実に生きている世界の写し絵ではないか」と語った。
また、ワン監督との共通点について「ぼくも彼も写真から入り、映画に転身した。写真の経験があると、被写体にどうカメラを向けるか具体的に考える。ワン・ビンの画(え)を見て、ぼくと似ているなと思った」と話した。
今年2月には来日したワン監督と対談した原監督。本人の印象を「風貌もあか抜けなくて、まるで田舎のあんちゃんのよう。私も都会的ではないので親近感が湧いた(笑)」と振り返った。
さらに過去に対談した米のマイケル・ムーア監督(『ボウリング・フォー・コロンバイン』)、ジョシュア・オッペンハイマー監督(『アクト・オブ・キリング』)との比較も。米国の闇に迫る作品を数々発表してきたムーア監督は「ただの典型的なアメリカ人。アホちゃうかと思った」とばっさり。
インドネシア大虐殺を描き、今年日本でも大きな話題を呼んだオッペンハイマー監督も「やはり典型的なアメリカ人。だからあのような発想が出る。大した映画じゃない」と一刀両断。「観客が圧倒されるおぞましさは、虐殺の数の多さ、虐殺した側が英雄視されている現実。作品のすごさではない」と持論を展開し、会場を笑いの渦に包んだ。
最後に「ワン・ビンとはまた話したいなあ。実に気持ちのよい男でした」と締めくくり、再会への期待を示した。「収容病棟」は全国順次公開中。
(文・遠海安)
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