韓国・富川(プチョン)市で2014年7月17〜27日に開かれた第7回富川国際ファンタスティック映画祭には、日本作品26本(合作含む)が招待された。多くの監督や俳優がゲストで登壇し、上映後のトークイベントは熱気に包まれた。
行定監督、最新作「円卓」を語る
20日、メーン会場の富川市庁舎のホール。行定勲監督の最新作「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」の上映には、多くの日本映画ファンが詰めかけた。釜山国際映画祭をはじめ韓国の映画祭への招待も多い行定監督は「韓国の観客に育ててもらった」とあいさつし、大きな拍手を浴びた。
主人公の琴子(こっこ)は大阪の小学3年生。祖父母と両親、三つ子の姉と暮らしている。正直で好奇心おう盛なキャラクターだ。家族やクラスメート、近所の人たちとのかかわりの中で、こっこはさまざまなことを考え成長していく。
監督は初の映画単独主演となった芦田愛菜のエピソードを紹介。台本を300回読んで完ぺきに覚え、初回の読み合わせの席には台本を持参しなかったこと。自分のせりふだけを覚えるのではなく、周辺人物のせりふや行動から自分の役を分析するなど、大人顔負けの役作りのスタイルを明かした。
原作は西加奈子の小説「円卓」。東日本大震災の後に読み、行定監督は「気持ちを分かり合うことが、簡単に楽しく描かれている。今の時代に必要な作品だと思った」と映画化を決めた。「現代の日本人が忘れている大切なことをテーマにした。とても重いテーマなので、軽く見える映画にしたかった」という監督のメッセージは、韓国の観客にどう伝わっただろうか。
白石晃士監督×キム・コッピ×葵つかさ
白石晃士監督が全編韓国ロケで製作したサスペンス・スリラー「ある優しき殺人者の記録」がワールドプレミア上映(世界初上映)され、白石監督と俳優のヨン・ジェウク、キム・コッピ、葵つかさが参加した。
凶悪な連続殺人犯(ヨン・ジェウク)が、幼なじみの女性ジャーナリスト(キム・コッピ)と日本人カメラマン(白石監督)を廃アパートの一室に呼び出す。そこに日本人カップルが迷い込み、事態は思いもよらぬ方向に展開していく。白石監督扮するカメラマンが一部始終を撮影する設定。全編がワンカットに見える主観映像方式が、緊張感の高まりを効果的に演出する。
キム・コッピは「冬の撮影で寒かったが、それよりも廃アパートのほこりがつらかった」と振り返った。殺人犯に襲われながら反逆を試みるシーンを演じた葵つかさは「耳をかじる演技が衝撃的で難しかった」と回想。休憩中に、日本語が堪能なキム・コッピと韓国のアイドルグループEXOの話題で盛り上がったエピソードを披露した。「ある優しき殺人者の記録」は9月6日、日本公開される。
不気味なデスゲーム描く「パズル」
高校を舞台にした不気味なデスゲーム(生き残りゲーム)の行方を描いた「パズル」の上映には、内藤瑛亮監督が舞台あいさつに立った。原作はドラマや漫画になった山田悠介の小説だが、映画版では設定やストーリーなどほとんどの部分が改編されている。
物語の冒頭で自殺を企て、危険な死のゲームに巻き込まれていく女子高校生を演じた夏帆。上映後には観客から「彼女が血まみれで踊るエンディングが印象的だった」という声が上がった。監督は「夏帆さんが『血しぶきを浴びるような作品に出たい』と言っていたので、では存分に浴びさせてあげようと考えた」と話し、会場の笑いを誘っていた。
内藤監督は、実在の事件を下敷きにした「先生を流産させる会」(11)で長編デビューした注目の若手。「日本では、善きものや善良な人物を描かない映画の企画は通りにくい。そうでないものを作りたい」と意欲を見せる。今回主人公の男子生徒が殺人に走る動機として示されるのは「クラス活動への参加を強要されたこと」。会場から「殺人の動機がよくわからない」と質問が出たが、監督は「みんなと一緒に何かをするよう強要されることを、非常に苦痛に感じる人がいる。実は自分もそう。オープニングでレッドカーペットを歩くのが辛かった」と笑いを交えて説明した。
矢口史靖監督にアジア映画賞
25日の授賞式で、矢口史靖監督の「WOOD JOB! 神去なあなあ日常」がNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞した。主な受賞作品は以下の通り。
(文・写真 芳賀恵)
<主な受賞作品>
・長編コンペティション部門
作品賞:The Dark Valley(豪・独、Andreas PROCHASKA監督)
・監督賞:Dead Snow 2: Red vs. Dead(ノルウェー、Tommy WIRKOLA監督)
・短編コンペティション部門
大賞:Habana (仏、Edouard SALIER監督)
・ヨーロッパファンタスティック映画祭連名 アジア映画賞
少女怪談(韓国、オ・インチョン監督)
・ネットパック賞
WOOD JOB! 神去なあなあ日常(日本、矢口史靖監督)
写真:
1:「円卓円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」スチールおよび行定監督の質疑応答=7月20日)
2:「ある優しき殺人者の記録」の(左から)ヨン・ジェウク、キム・コッピ、葵つかさ、白石晃士監督=7月19日
3:「パズル」の内藤瑛亮監督=7月19日、いずれも富川市で
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