2014年09月27日

「ファーナス 訣別の朝」 米社会の現実、鉄の街に 煮えたぎる男たちの怒り

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 レオナルド・ディカプリオ&リドリー・スコット製作、クリスチャン・ベール主演の犯罪ドラマ「ファーナス 訣別の朝」。監督・脚本は「クレイジー・ハート」(09)が高く評価されたスコット・クーパーだ。

 ペンシルベニアの田舎町を舞台に、米国が抱える底知れぬ闇を描く。冒頭、ドライブインシアターで言うことを聞かない同乗女性に切れ、暴力をふるう男が登場する。見かねて注意した他人にも男は逆上し、激しく打ちのめす。暴力で支配する犯罪組織のリーダー、ハーラン(ウディ・ハレルソン)だった。理不尽な暴力描写で先制攻撃をかけ、ハーランの凶暴性を観客の頭に刷り込み、ドラマは幕を開ける。

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 ペンシルベニアのブラドックは、ファーナス(溶鉱炉)の白煙が立ち込める鉄の町だ。代々男たちは鉄に人生の大半を費やしてきた。ラッセル(クリスチャン・ベール)もそんな一人。年老いた病気の父を世話しながら製鉄所で働いている。弟のロドニー(ケイシー・アフレック)はそんな生き方を嫌い、イラクに4回出征。心に傷を受けて帰って来た。ラッセルは貧しいながら、恋人リナ(ゾーイ・サルダナ)とささやかな幸せをかみしめて暮らしてきたが、ロドニーの帰還で運命が狂い始める。

 米国資本主義を根底で支える労働者階級の兄、米国の威信をかけイラクで戦った弟。違う世界を生きてきた兄弟は、ロドニーが作った借金のせいで悪の闇へ落ちていく。ラッセルはロドニーがペティ(ウィレム・デフォー)から借りた金の一部を肩代わりした帰り道、自動車事故で親子を死なせてしまう。

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 刑務所に入っている間、ラッセルの人生は大きく変わってしまった。父は死に、恋人だったリナは町の保安官バーンズ(フォレスト・ウィテカー)と交際していた。ロドニーは日銭を稼ぐため、ぺティの後ろ盾でストリート・ファイトに明け暮れていた。公正を望む兄に歯向かうように、大金目当てでハーラン主催の八百長試合に出場する──。

 「ファーナス 訣別の朝」は、1970年代後期のアメリカン・ニューシネマの系統をくむ。ポール・シュレイダーが脚本を書いた映画「タクシードライバー」(76)、「ローリング・サンダー」(77)に作風が似ている。戦争からの帰還兵が怒りを爆発させ、悪に向かって銃を向ける。監督はラッセルとロドニーに、過去の作品の精神を継承させたのだろう。兄弟の怒りは溶鉱炉のごとく、ふつふつと煮えたぎる。ストイックな犯罪ドラマの佳作である。

(文・藤枝正稔) 

「ファーナス 訣別の朝」(2013年、米国)

監督:スコット・クーパー
出演:クリスチャン・ベール、ウッディ・ハレルソン、ケイシー・アフレック、フォレスト・ウィテカー、ウィレム・デフォー

2014年9月27日(土)、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://furnace-movie.jp/

作品写真:(C)2013 Furnace Films, LLC All Rights Reserved

posted by 映画の森 at 08:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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