
香港。武術家の男がトンネルで殺された。遺体に刺し傷はなく、警察は「拳で撲殺された」と断定する。捜査を担当する女性警部のロク(チャーリー・ヤン)に、服役中の元警官ハーハウ(ドニー・イェン)が面会を求め、協力を申し出る──。
香港が生んだカンフースター、ドニー・イェンの最新作「カンフー・ジャングル」。原題「一個人的武林」が示す通り、カンフーの強者であふれる武林=ジャングルを、ドニーが戦いながら生き抜く物語だ。監督は「孫文の義士団」(09)のテディ・チャン。

捜査協力のため一時釈放されたハーハウは、犯行の目的を「怨恨ではない」と断言。「今後も殺人は続く」と予言する。その言葉通り、時をおかず武術界の猛者たちが次々殺害される。さらに現場には、容疑者自ら手がかりを示す武器のレプリカが残されていた。
まず主役の背景設定が特異だ。ハーハウは警察の武術教官でありながら、「天下一の武道家」を決める私的試合を決行。誤って相手を殺してしまい、服役している。スタートからこの映画が、カンフースターによる、カンフー好きのための、純粋なカンフー映画と気づくだろう。ドニーが戦う舞台は現代の香港だが、実は治外法権的なジャングルなのだ。

ドニーを迎え撃つ無敵の容疑者には、中国の個性派俳優ワン・バオチャン。コメディー演技に定評があるが、実は6歳から武術を学び、少林寺での修行経験もある実力者。ワンが多彩な技を繰り出し、猛者たちを次々倒していく。ついに顔を合わせたドニーとの決戦は、13分を超える死闘となる。
また、劇中次々とカメオ出演する香港アクション映画の監督、俳優、製作者たちも見どころの一つ。チャン監督が「映画人生の8割をアクションに捧げてきた。多くの武術監督と仕事をしてきた。特別に思い入れがあり、アクションを振り付けるのも好き」と話すように、全編にカンフー映画への敬意と愛があふれた作品だ。
(文・遠海安)
「カンフー・ジャングル」(2014年、中国・香港)
監督:テディ・チャン
出演:ドニー・イェン、ワン・バオチャン、チャーリー・ヤン、ミシェル・バイ、アレックス・フォン、ルイス・ファン
2015年10月10日(土)、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://kung-fu-jungle.gaga.ne.jp/
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