第28回東京国際映画祭のワールド・フォーカス部門で上映された1本だ。
冒頭に映し出されるのは、ベルリンのクラブで、エネルギッシュに踊る若い女性。主人公のヴィクトリアだ。つい最近マドリードからやってきたばかりで、ドイツ語は喋れない。そんなヴィクトリアに、地元のやんちゃな若者たちが、ブロークンな英語で話しかけてくる。不良っぽくはあるが、根っからのワルでもなさそうな4人組。ヴィクトリアは、その中の一人、ゾンネと意気投合し、彼らと行動をともにすることになるが――。
深夜のベルリンで気ままに愉快な時間を過ごすはずだったヒロインたち。だが、突然事態は急変、予想もしなかった試練が5人を襲う。全編140分、切れ目なしのワンカット。窮地に追い込まれた若者の運命を、ヴィヴィッドに映し撮った、青春映画の傑作だ。
まずなんといっても、カメラワークの敏捷さに目を見張る。踊る、歩く、昇る、走る。若く躍動的な若者たちは、ひっきりなしに動き回る。クラブ、街頭、ビルの屋上、カフェ、車、ホテル。場所もどんどん移動する。しかし、カメラは常に彼らの間近で、一定の距離を保ち、構図もほとんど崩さず、付き従っていくのである。これを140分途切れずに続けるのだから驚きだ。
俳優たちも大したものだ。1度でもNGを出せば撮り直し。そのプレッシャーを感じさせない、伸び伸びとした自然な演技。ほとんど即興なのではないか。彼らの反応があまりにリアルなので、見ている方としては、目の前で起きている現実の出来事に立ち会っている感覚に襲われる。
監督のゼバスティアン・シッパーは、日本でも公開された「ギガンティック」(99)でデビュー。ハンブルクを舞台に、少女を一人交えた若者たちの一夜の行動をスタイリッシュに表現した同作は、本作とモチーフが似ており、人物構成も共通するところがあるが、スタイルはまったく違う。
この2本の間をいったいどんな作品が埋めてきたのか。シッパー監督の15年間の歩みが知りたくてたまらない。2015年ベルリン国際映画祭で最優秀芸術貢献賞(撮影)、ドイツ映画賞で6部門を受賞。
(文・沢宮亘理)
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