2016年04月17日

「オマールの壁」パレスチナの分断、踏みにじられる信頼と友情

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 パレスチナ自治区を縦横に横切る壁。イスラエル兵の監視をすり抜け、青年オマール(アダム・バクリ)は高さ8メートルの壁をよじ登り、向こう側に住む友人に会いに行く──。ハニ・アブ・アサド監督の新作「オマールの壁」は、壁で分断されるパレスチナの若者たちの友情、裏切り、葛藤を描く。

 ヨルダン川西岸地区に住むオマールは、パン屋で働いている。幼なじみのタレク(エヤド・ホーラーニ)、アムジャド(サメール・ビシャラット)に会うため、命がけで壁をよじ登る日々。タレクの妹ナディア(リーム・リューバニ)と交際し、結婚を夢見ていた。

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 自由を求めるオマールたちは、武装組織から銃を手に入れ、イスラエル軍を襲撃する。しかし、イスラエル秘密警察はオマールを逮捕。「恋人も地獄行きになる」と脅しをかける。スパイになるよう強要されたオマールは、承諾したふりをして釈放される。反撃を狙う3人だったが、秘密警察はさらに上を行く「情報戦」を仕掛けてくる。

 パレスチナの壁と分断、イスラエルによる支配。浮かび上がるのは、人間の尊厳、友情、希望を踏みにじる占領政策の狡猾さだ。秘密警察はオマールたちの個人情報を把握し、時にアメをちらつかせながら、仲間同士を対立させる。暴力と情報操作でじわじわと精神と肉体を支配し、骨抜きにする。

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 監督は言う。「作品の主題は信頼だ。人間関係でいかに信頼が重要で、かつ不安定なものか。信頼は愛と友情のかなめ。非常に強いものだが、もろくもあり、幻覚のようでもある」

 壁で分断され、傷つけられた若者たち。自分を取り戻すため、オマールが最後に選んだ手段に、胸ふさがれる。

(文・遠海安)

「オマールの壁」(2013年、パレスチナ)

監督:ハニ・アブ・アサド
出演:アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニ、サメール・ビシャラット、エヤド・ホーラーニ

2016年4月16日(土)、角川シネマ新宿、渋谷アップリンクほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.uplink.co.jp/omar/
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posted by 映画の森 at 11:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | パレスチナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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