フランス、パリ郊外のさびれた団地。奇抜な物語を紡ぐのは3組の男女。車いすの男と夜勤の看護師。落ちぶれた女優と留守番の高校生。アルジェリア移民の女性と米国人宇宙飛行士。団地に住む以外、彼らに共通点はない。交わることのない3つのストーリーには、「再起」のメッセージが込められている。
団地の住人会議。議題は故障したエレベーターの修理費だ。2階に住むスタンコヴィッチ(ギュスタヴ・ケルヴァン)は支払いを頑なに拒む。費用を分担しない代わりに使用しないと約束する。しかし皮肉にもけがを負い、エレベーターが必要な生活になってしまう。そこで誰もいない深夜に人目を盗んで外出し、行きついた病院で夜勤の看護師(ヴァレリア・ブルー二・テデスキ)に出会う。
いつも家で留守番している高校生のシャルリ(ジュール・ベンシェトリ)。ある日隣に中年女性が越してきた。慣れない団地で困る彼女を助けるうちに、かつて名を馳せた女優ジャンヌ・メイヤー(イザベル・ユペール)だと知る。シャルリは出演作を観て絶賛し、ジャンヌは自信を取り戻す。以前演じた劇の再演を知り、再びヒロイン役を目指すジャンヌだったが──。
米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士ジョン・マッケンジー(マイケル・ピット)が団地の屋上に着地した。フランスに着陸したことに取り乱すジョンは、最上階の部屋で電話を借りる。部屋の主はアルジェリア移民のマダム・ハミダ(タサディット・マンディ)。マダムは数日間ジョンをかくまうようNASAに頼まれる。言葉が通じない二人の共同生活が唐突に始まる。
セリフが少なく俳優の演技が際立つ作品。シャルリ役のジュール・ベンシェトリはサミュエル・ベンシェトリ監督の実の息子。名女優イザベル・ユペールの圧倒的な演技にも負けない存在感を放つ。
団地で起きるそれぞれの物語は、互いにかかわりを持たない。しかし確かに「そこ」に存在する。無機質な見た目の内側で、人々の営みが続いている。たまたま居合わせた偶然が、それぞれの再出発をひと押しする。
(文・魚躬圭裕)
「アスファルト」(2015年、フランス)
監督: サミュエル・ベンシェトリ
出演:イザベル・ユペール、ヴァレリア・ブルー二・テデスキ、マイケル・ピット、ジュール・ベンシェトリ、ギュスタヴ・ケルヴァン、タサディット・マンディ
2016年9月3日(土)、 ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://www.asphalte-film.com/
作品写真:(C)2015 La Camera Deluxe - Maje Productions - Single Man Productions - Jack Stern Productions -
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