2017年08月19日

「ベイビー・ドライバー」犯罪+カーアクション、新たな切り口で新風

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 「ショーン・オブ・ザ・デッド」(04)、「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメ!」(07)のエドガー・ライト監督が、カーアクション満載の犯罪映画「ベイビー・ドライバー」で英国からハリウッドに本格進出した。

 逃げる銀行強盗団を乗せ、雇われドライバーのベイビー(アンセル・エルゴート)が、ご機嫌な音楽に乗り、天才的な運転テクニックを披露する。ベイビーがハンドルを握る真っ赤な日本車「スバルWRX」が、パトカーと凄まじいカーチェイス。まんまと警察を巻いてアジトに向かう。

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 続いてミュージカルパートに突入。ベイビーの仕事は終わらない。強盗団にコーヒーをふるまうため、アジトから少し離れたコーヒー店へ徒歩で使い走り。ベイビーは音楽に合わせて軽快なステップで動き、カメラもその姿をワンショットで追い続ける。観客は幕開けからアクティブな描写に心をわしづかみされる。

 幼い時に交通事故で両親を失ったベイビーは、後遺症で耳鳴りが止まらなず、iPodの音楽で耳鳴りを封じ込める。彼に一目置くのが、大物犯罪者ドク(ケビン・スペイシー)だ。ベイビーはドクに大損させた借りを返すため、強盗団の逃走専門ドライバーをしている。借りもあと少し。ベイビーは最後の仕事をこなした後、真っ当な人生を歩もうと計画していた──。

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 米犯罪映画とカーアクションは相性がいい。「ブリット」(68)や「ワイルド・スピード」シリーズなど多くのヒット作が生まれ、一ジャンルとして定着している。新たな切り口を見せたのが「ベイビー・ドライバー」だ。犯罪とカーアクションに音楽をシンクロさせた。監督はシーンに使う楽曲を先に決め、曲に合わせて脚本を書いたという。

 音楽は主人公の内心も代弁する。他人の前で心を開かないベイビーは大好きな曲に気持ちを重ね、口パクで歌うマネをしながら踊る。表向きは犯罪映画だが、繊細な主人公が運命を切り開く青春映画の一面も持ち、恋愛パートが隠し味となっている。

 ベイビーは行きつけのダイナーで働くデボラ(リリー・ジェイムズ)へ淡い恋心を抱く。しかし、ドクにバレて利用されてしまい、新たな犯罪に手を染めるきっかけとなる。繊細なベイビーと、それを悪用する大人たち。

 ドクを演じたスペイシーが貫禄の演技。オスカー受賞俳優のジェイミー・フォックスら、アクの強い個性派が若い俳優を脇からサポートしたエキサイティングな犯罪映画だ。

(文・藤枝正稔)

「ベイビー・ドライバー」(2017年、米国)

監督:エドガー・ライト
出演:アンセル・エルゴート、リリー・ジェームズ、ケビン・スペイシー、ジェイミー・フォックス、ジョン・ハム

2017年8月19日(土)、新宿バルト9ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

http://www.babydriver.jp/
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posted by 映画の森 at 11:31 | Comment(0) | 米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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