24歳のOLヨシカ(松岡茉優)は、中学の同級生「イチ」(北村匠海)に10年の片思い中。そこへ突然、暑苦しい会社の同期「ニ」(渡辺大知)に告白される。テンションが上がるも、ニとの関係に乗り気れない。「一目でいいから、今のイチに会って前のめりに死んでいこう」と思い立ち、同窓会を計画。ついに再会の日が訪れる──。
芥川賞作家・綿矢りさの同名小説の映画化。監督、脚本は「恋するマドリ」(07)の大九明子。今年の東京国際映画祭コンペティション部門に出品され「観客賞」など2賞に輝いた。
ヨシカは恋愛には奥手、不器用に妄想するオタク系女子だ。会社では経理課に所属し、アパートで独り暮らし。アンモナイトの化石を集めて癒されている。ところが「二」に告白され、恋愛感情が目覚めてしまう。「イチ」への思いが募り、暴走する姿がコミカルに描かれる。
なんといっても映画初主演の松岡の演技に尽きる。ネガティブなオタク系で夢見がち、妄想世界に生きる。泣き、笑い、叫び、歌う。感情の起伏が激しい難役を、誰もが共感できるキャラクターに転じた。思いを寄せる「イチ」はクールな二枚目。リアルな相手の「二」は厚かましいお笑いキャラ。妄想と現実に迷うヨシカの葛藤が、手に取るように伝わってくる。
大九監督は、くせのある原作を、小気味よく映像化した。ヨシカに毒のあるモノローグを多用させつつ、現実と妄想をまぜこぜにしてカラフルに描く。ところがそんなヨシカを一瞬で空虚な灰色の世界に引き戻す。斬新、残酷、すさまじい破壊力だ。初めての恋愛で暴走するヨシカを、背中から押していくさじ加減も絶妙。
優しくしたり、突き放したりした後、最後は温かく手を差し伸べる。かなり変わったくせのある物語だが、着地点は地に足がついている。今年公開の邦画では一押し、毒気あふれる異色のラブコメディーだ。
(文・藤枝正稔)
「勝手にふるえてろ」(2017年、日本)
監督:大九明子
出演:松岡茉優、渡辺大知、石橋杏奈、北村匠海、趣里
2017年12月23日(土)、新宿シネマカリテほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://furuetero-movie.com/
作品写真:(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
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