山間の田舎町を舞台に、四十路男の日常と葛藤を描いた映画「半世界」主演の稲垣吾郎、阪本順治監督がこのほど記者会見した。第31回東京国際映画祭で上映され、炭焼き職人を演じた稲垣は「本当に夢のよう」と笑顔。阪本監督は「稲垣君は難しい役だっただったと思う。みんなにとって新鮮な撮影だったことが一番うれしい」と振り返った。
主なやり取りは次の通り。
――「半世界」という言葉をどうとらえるか。
稲垣:シンプルだけれど奥が深い。自分にとっての半世界ってなんだろうと、いろいろ想像してみた。それぞれの人が小さいけれど自分の世界の主人公で、人生がある。いろいろな気持ちで見てもらえれば。
阪本監督:日中戦争の従軍カメラマンとして中国へ渡った写真家・小石清の写真展のタイトルが「半世界」だった。勇ましい軍人より、現地の人、動物を撮っていた。名もなき人の営みも世界なんだと解釈し、少しでも近づこうとして企画した。
――情けないダメおやじの役がはまっていた。演じてどうだったか。
稲垣:はまっているといわれると複雑。そもそも自分がどういう人間か分からない。自分にぴったりな役が分からなくていい。今回大きかったのは、ここ数年の自分の環境の変化。仕事の仕方も変わって、これが1作目。見たことのない自分がスクリーンに現れた。この作品に巡り合え、届けられるのは幸せだ。
――「見たことのない」とはどんな自分か。
すべて。チェーンソーをを持って、頭にタオルを巻いて、。日本の原風景の中で生活している。自分をよく俯瞰で見るが、こういう稲垣吾郎は見たことがない。自分ひとりの力ではなく、監督や共演者のおかげ。撮影地の伊勢志摩の土地にも誘われた。
――(阪本監督に)稲垣にぴったりの役だと思ったのか。
阪本監督:稲垣君の印象はごまかさない、自分を前に出さない。淡々と寡黙に、山の中で土にまみれるイメージが浮かんだ。変えようとか、無理にやらせようというのはなかった。主人公と稲垣君の性格はもちろん違い、紘は家庭を顧みず、どこか欠けている。映画はそういう人物を真ん中に据えた方がいろいろな話が作れる。
――監督はもう少しかっこよくなど指示はあったか。
稲垣:僕はクールな役、一見かっこいい役、超人的な役が多い。実際はかっこよくない。身のこなしは細かく指導があった。序盤の(長谷川博己演じる)瑛介との再会シーンが一番初めに撮った長回しのワンカット。そこがきっかけを作ってくれた。そこで生まれた物を指さすしぐさ……ぶっきらぼうに男らしくやってみろと。監督はみかんの皮のむき方まで、細かく指導してくれた。
――炭焼き職人、中古車のディーラー、元自衛官の登場人物。親から継いだ仕事にした理由、地方都市を舞台にした理由は。
阪本監督:私自身が代々続いた店を最近たたんだ。商店街なので入ってくる後継の話をヒントにした。海外での撮影が多かったので、地元に帰るような気持ちで撮りたかった。小さな都市の小さな町、間口が狭いけど奥が深い町から世界を見たかった。
――男三人の友情と絆が主人公を動かす。稲垣さん自身に経験は。
稲垣:男のグループでずっとやってきて、香取君、草g君と「新しい地図」を広げていくことに無我夢中。友情と仕事での仲間は違うと思うが、僕らにも絆はある。二人にも早くみてほしい。
(文・写真 岩渕弘美)
「半世界」(2018年、日本)
監督:阪本順治
出演:稲垣吾郎、長谷川博己、池脇千鶴、渋川清彦、竹内都子
2019年2月、TOHOシネマズ 日比谷他で全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
http://hansekai.jp/
作品写真:(C)2018「半世界」FILM PARTNERS



